うしろの正面だーあれ
『…すいません、こいつ連れて帰ります。』
そう言うと、憂は右手で あたしの腕を掴み、もう一方の手で 2人分の鞄を持った。
羨ましそうな女子達の視線と、ひやかし混じりの男子の視線、そして呆気にとられている先生の視線の中、あたしは憂に手を引かれて教室を後にした。
何も言わない憂に、何も言えないあたし。
いつもより少し速めに歩く憂の横顔を、あたしは ただ見ていた。
『…そんな見んなって。』
『え…?』
『お前、見すぎだろ。』
『…バレてた?』
『バレバレ。』
やっと憂と目が合って、2人 笑い合った。
いつものように会話が出来て
いつものように笑い合って
いつものように隣に居る。
そんな些細なことが、すごく嬉しくて。
今まで気付かなかった小さなことが、あたしにとっては無くてはならないもので。
そのことに気付けただけでも、喧嘩の意味は あったかな。