うしろの正面だーあれ



『…だから帰れっつったろ?』



慰めるような目であたしを見る稚早に、あたしは力なく笑った。



『…そうだね。』



『…帰るぞ。』



そう言って、稚早は左手を差し出した。



あたしは その手を求めて、動かない足で階段を降りた。



指先が触れた瞬間、寒さで感覚の無かった指に感覚が戻った。



温かさを感じたのは もう少し後だったけど、そのときの冷えきったあたしの心には充分で。



冷えきった頬に、温かい涙が流れた。



そのまま どうすることも出来ず、あたしはその場にしゃがみこんだ。



すると、見かねた稚早が階段を2、3段上って、あたしの前にしゃがみこんだ。



『沙良、泣くな。泣いたら あいつの思うツボだぞ。』



稚早の訳の分からない言葉に 貸す耳は無くて。



あたしは ひとり泣きじゃくった。



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