うしろの正面だーあれ
そんなあたしを抱きしめようともしない稚早は、黙ってあたしを見ていた。
それは、きっと憂に対する誠意だったんだと思う。
一喜くんに対してもだとは思うけど、稚早にとっては憂の方が大事だから、たぶん憂に対しての誠意。
だけど、そのときのあたしには、そんな真摯な態度がもどかしくて。
煩わしくて。
思わず言ってしまったんだ。
『何で抱きしめてくれないの…?』
その言葉に、稚早は哀しい顔をして…
あたしを抱きしめてくれた。
だけど、それは恋人同士のようなものではなく、どちらかと言えば、親が子どもをなだめるような、そんな抱きしめ方だった。
稚早があたしの背中をポンポンと優しく叩き、白いダウンジャケットがポスポスと音を奏でた。
あたしの涙が稚早の肩にポロポロと落ち、黒いダウンジャケットがポタポタと音を奏でた。