うしろの正面だーあれ
そんな2人の様子を、息を潜めて見ている者が居た。
彼、もしくは彼女の手には、温かな院内には似つかわしくない手袋がはめられている。
ガラガラガラ・・
看護士の運ぶワゴンの音が近付き、その者はサッと身を翻して何事もなかったように歩き出した。
ガラッ
「面会時間、終了ですよ。」
看護士が憂の病室に入るなり、沙良に向かって言った。
「…はい。」
少し寂しげに言うと、看護士は一瞬 全ての動きを停め、沙良を見た。
「彼氏?」
看護士が優しく、そして少し意地悪な声で尋ねた。
「違います!」
頬を赤らめて すぐに否定する沙良。
「え、違うの?」
看護士が訊くと、沙良は俯いた。
「…違くない、かな。
でも…完全に彼氏な訳じゃない…。」
少し寂しげに応えた沙良に、看護士は優しく笑う。
「でも、好きなんでしょう?」
その問いに、沙良はコクッと頷く。
「だったら、今は祈らなきゃ。
早く目が覚めるように…。ね?」
「…はい。」
その返事は弱々しくなんかなく、はっきりとしていた。