うしろの正面だーあれ



「…本当は悪い奴じゃないっつってた。」



「…え?」



隆史の言葉に、タケルは顔を上げた。



「憂の兄貴。…今は狂ってるけど、本当は悪い奴じゃないって。
杏奈だって、もしかしたら…」



「ざけんな!」



隆史の言葉を遮って、静かな病室に怒声が響く。



「アイツは…救いようがない…。
助けてやろうとも思えないくらい…アイツは正真正銘の悪だ。」



その瞳には、一点の曇りも無かった。



ただ、代わりに隆史の心が曇ってしまった。



決心して、やっと見つけた1本の細い道。



それが今、閉ざされてしまったのだ。



時間が、無いのに…。



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