うしろの正面だーあれ



ガラッ・・



突然 開いた病室の扉に、隆史はバッと窓の方を向き、涙を拭った。



憂の病室を訪ねたのは朝子であった。



隆史の、今の行為だけで状況を悟った朝子は、遠慮がちに声を掛けた。



「隆史…。」



「お〜 朝子!
どうした?見舞いか?」



鼻声で、わざと明るく振る舞う隆史に、朝子はいたたまれない表情で彼を見つめた。



「…まだ目 覚めないの?」



強がりな隆史にとっては、気付かぬフリをすることも優しさなのだと解し、憂の容態について尋ねた。



「…ああ。」



「…そう。
沙良はもうすぐ退院できるみたい。…鶴見も、早く意識戻るといいね。」



「…ああ。」



隆史は、今尚ベッドで眠る憂を見つめながら答えた。



「…もし、鶴見の意識がこのままだと、沙良、可哀想だよ…。
あの後から、沙良のこと、敬遠し出してる子達も少なくない…。」



あの後、とは、沙良が教室で戻してからである。



「…お前はダチだろ?」



隆史の、まるで当たり前だろ?とでも言うような問いに、朝子は少し驚いた表情を見せたが、やがて照れ臭そうに「…まぁね。」と言った。



< 536 / 675 >

この作品をシェア

pagetop