うしろの正面だーあれ
「マヌケって言うなよ〜。」
鏡を元あった場所に戻しながら、隆史は口を尖らせて言った。
「くしゅんっ」
薄っぺらい体操着のままである咲子は体をブルッと震わせた。
誰も居ない保健室は、ストーブもエアコンも入っていない。
あー…と、口を開けたまま咲子を見る隆史。
自分が制服を着ていたならば、カーディガンを貸せたのに…という表情。
「ごめんなー咲子。」
「…え?」
「もうチャイム鳴るから先 行ってていいぞ。」
「………………。」
「…って言えなくて。」
「へ?」
咲子は目を少しばかり大きくし、隆史を見た。
「渡したい物あってさ。」
そう言った隆史の口からは、室内であるにも関わらず、白い吐息が洩れていた。