うしろの正面だーあれ
後ろから肩を叩かれる。
…どこかで予想はしていた。
手先が急激に冷えていくのが分かる。
怖い…、今すぐにでも逃げ出したい…、しかし足が動かない…。
咲子の眉はハの字に下がり、眉間には恐怖に刻まれた皺が…。
不規則な荒い呼吸を繰り返し、全身が小刻みにカタカタと揺れている。
そんな咲子の様子に気付いた朝子は叫ぶように言った。
「咲子!?どうしたの!?」
朝子が咲子の肩を掴む。
咲子の目は虚ろで、焦点が合わない。
「咲子、どうした?
ゆっくり言ってみ?」
朝子に反して、隆史は優しく落ち着いた声で言った。
その言葉に、咲子の震えは止まった。
…が、目は依然 虚ろなまま。
やがて、咲子がゆっくりと口を開いた。
「うしろの正面だーあれ…。」