うしろの正面だーあれ
「…も〜 咲子、危ねぇじゃん!
俺のこと、殺す気か!
…まぁ、椅子が重くて足 フラついたんならしょうがねぇよな。」
スピーカーから流れる、いやに明るい曲の中、静まり返る教室の中心で、隆史は陽気に言った。
隆史の言葉で沈黙は解き放たれたものの、まだざわめき程度だ。
互いに顔を見合わせ囁いている。
「…てか、やだ!すごい色!
瀬崎くん、保健室 行こ!?ね!」
確かに隆史の左腕は、先程とは比べ物にならないくらい青紫色に変色している。
以前、隆史にアドレスを聞き出そうとしていた女子生徒の内の1人が、半ば強引に隆史を連れ出した。
「…あっ これからは椅子持って移動するとき、頭の上に乗せんなよ〜!また落とすぞ〜!」
教室の外から叫ぶ隆史に、咲子の目からは涙が溢れた。
…しかし流さなかった。
流してしまえば、隆史が せっかくかばってくれた意味が無くなる。
一度も痛そうな顔をせずに、自分を守ってくれた隆史に
確かに咲子の心臓は大きく脈打っていた。