うしろの正面だーあれ
「…なぁ、咲子は?」
騒がしい教室の中、どこにも見当たらない咲子の姿を探しながら隆史は尋ねた。
「居ないね。どうしたんだろ…。
咲子、変じゃない?
何かあったのかな…。」
沙良が心配そうに呟いた。
朝子の目は少し泳ぎ、握った拳は微かに震えている。
彼女は、昨日の出来事を必死でセーブしているようだった。
そんな朝子の様子を、何とも読み取れない表情で見ていた隆史の鼻から、浅い溜め息が抜けた。
「…悪い、俺 帰るわ。」
「え?ちょっと…!」
呼び止める沙良の声も聞かず、隆史は帰る用意を始めた。
「…あ、亀地。」
教室を出る一歩手前で立ち止まる。
「今日、憂の見舞い来いよ。」
「え…?うん…。」
沙良が答えると、隆史は少し寂しげに笑い、「…じゃあな。」と言って教室を出ていった。
その後ろ姿が、やけに何かを物語っていた。
しかし、このときは誰も気付きはしなかった。
隆史の語った意味を。