うしろの正面だーあれ
ガラッ・・
小さな花束を持って、沙良は病室に足を踏み入れた。
病室に、人の気配は無い。
「…これ、綺麗でしょ?」
そう言って、沙良は花束に目を落とした。
青い、花束だった。
「憂のイメージは青だからさ。
…知ってた?あたし、お花屋さん行くと、いっつも青いお花 買っちゃうの。…憂のせいだからね?」
そう言って笑い掛けてみても、憂から返事は無かった。
いつもの憎たらしい相槌も
人を小馬鹿にしたような笑みも
今の憂には何も無かった。
「…良い匂いでしょっ?」
気を取り直したようにそう言って、沙良は憂の鼻に花束を近付けた。
「憂がさ…いっつも食べてたアメの匂い…忘れられないよ…。」
そう呟くと、沙良の瞳からは一筋の涙がこぼれ落ちた。
「早く起きてぇ…。」
痛々しい心の叫びが、涙でしょっぱくなった沙良の口から洩れた。