うしろの正面だーあれ
隆史の取り出した物は腕時計だった。
引き出しの奥で忘れ去られていた腕時計を、何故 今日に限ってつけようと思ったのだろうか。
電話で時報を聞いて、隆史は正確に時間を合わせた。
「…よし。」
溜め息混じりにそう言うと、隆史は学校へ行く準備を整えた。
ガラッ・・
いつもの教室。
いつもの顔ぶれ。
いつもの…
いや、彼にとっては…彼だけには、「今日」は「いつもと同じ」ではなかった。
後々、此処に居る全ての人間にとってもまた、「今日」は「いつもと同じ」ではなくなる。
そんなことに気付くはずもなく、彼らは馬鹿みたいに笑う。
そんな笑いさえ、隆史にとっては疎ましく、煩わしかった。
しかし、彼の不機嫌さに気付く者など、誰一人として居なかった。