うしろの正面だーあれ



嗚咽を洩らしながら食べ続ける沙良に、誰も、何も言わなかった。



優しさが彼女を苦しめることになることも、触れられたくないだろうことも ちゃんと解っていたからだ。



代わりにママはハンカチをそっと差し出し、セイジはカウンターから奥の席に座り直し、ジョージは煙草の代わりにひたすらチョコレートを食べていた。



関わってこないように見えて、実は関わってくれている。



心配じゃないのかと思うけれど、本当は心配してくれている。



大人の気の遣い方。



それは、今の沙良にとって、これ程 心地良いものはなかった。



きっと、憂にとってもまた、ここは心地良い空間だったのだろう。



今になって気付いたって、もう遅いのかもしれないけれど…。



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