うしろの正面だーあれ
恐る恐る振り返る。
『みっ…』
言いかけて、やめた。
看護士が居るからだ。
『み?』
看護士が不思議そうな面持ちで咲子を見つめた。
『あっ…
み…みかん食べたいなぁ…って…。』
『ふふっ
お腹すいたの?』
『あ…あはは…
私、ちょっと朝子ちゃん探してきます。』
『そう?悪いわね。』
病室を出て、人気の無い階段へと向かう。
『どうしたの?みっちゃん…。』
『朝子ちゃんが…』
『え…?』
この階段の外に面した壁は、ガラスのタイルが張り巡らされている。
ガラスが分厚いため、景色は ぼやけて、ほとんど色しか見えない。
そこに、黒い影が一瞬 覆った。