すべてはあの花のために⑥

 ……あいつさ、年明け最初の登校日の時、めちゃくちゃキレてただろ? それにはちゃんとわけがあるんだ。

 さっき言ったけど、もうあいつも限界なんだよ。
 母さんもおかしくなってるけど、自分も多分、わかんなくなってきてる。だから苛ついてるんだ。
 学校ではまだ大丈夫だけどな。俺らが、みんながいるから。あいつの名前を呼んでやるから。


 めちゃくちゃキレてたのは、確かにあの時の理由でキレてた。それだけ、あいつにとってみんなが大事だってこと。間違えずにみんな、『日向』と『陽菜』を呼べてた。区別がついてたから。
 あいつにとっては、陽菜がいた頃からちゃんと自分を呼んでくれる、大切な友達なんだよ。

 だからお前のせい……って、まあ俺らがちゃんと理解する前にキレたのが悪いんだけど。みんながキレたりつらそうな顔してたりしてたのも、許せなかったんだ。

 でも、もうお前は仲直りしたんだろ? だからもう気にするな。あいつも悪かったって思ってるから。



 俺は今、父さんにそのことをわかって欲しいのと、母さんにもちゃんと、日向を日向って呼んでもらいたいんだ。俺がしつこかったから、父さんにはぶん殴られたけどな。

 母さんの方は会ってもくれないんだ。前は会ってくれてはいたんだけど、最近は全然。
 母さん、日向しか家に入れないんだよ。日向も家に入れてくれねえ。だから、家の中でどうしてるのか、大丈夫なのかとかわからないんだ。

 ……多分あいつ、隠してるから。みんなに心配掛けまいとして。


 お前と日向ってさ、ちょっと似てるとこあるんだよ。
 顔に出さないようにして、自分のことは話そうとしない。しんどいのに、みんなに心配かけたくないから言わない。

 だからか、一番よく気が付くのは日向なんだ。あいつは、大切な友達のためなら、なんだってするんだ。それだけ大好きなんだよ、みんなが。
 もちろん、その中にお前も入ってるから。心配すんな。


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