すべてはあの花のために⑥
どうやら今日の夕食は親子丼みたいです!
「美味しそう! ツバサくんお上手なんですね!」
「まあこれくらいはね。アンタは……まあ、あれだけ美味いチョコ作れるんだから、料理もできるか」
「作れないことはないですね。できるように、わたしはならなければいけなかったので」
「……そっか。得意料理とかは? あるの?」
「……オムライス」
「え? すごいじゃん」
「あっ。……ごめん。違うんだ。えーっと、得意料理は特にないかな? 何でもそこそこ作れるよ」
「……そっか。じゃあ、明日の朝ご飯は一緒に作ろ?」
「……! はいっ。よろしくお願いしますね」
そうこうしているうちに、サラダとお味噌汁も出来たので、二人でご飯を食べた。
「(……な、なんかこうしてると……)」
「家族、みたいですね――」
「ぶはっ――!!」
「ええ!? つ、ツバサくん大丈夫ですか?! 布巾布巾!!」
ツバサが味噌汁を噴射▼
「わ、悪い……」
「いえいえ。わたしが変なこと言ったみたいですみません」
「わかればいい、……おい。どうしたんだよ」
床に零れた味噌汁を拭いている葵の手が止まっている。その表情は暗かった。
「……いいえ。なんでもないですよ?」
そうやってまた、壁を作られたツバサはまだ、葵に踏み込めない。
「(姿を戻したって、結局のとこ変わっちゃいないんだ)」
ツバサもどこか悔しそうに、顔を歪めた。
時刻は21時。二人で並んで食器の片付けをしていた。
「ツバサくんもお風呂どうぞ? わたしはそこら辺物色させてもらいますので」
「そんなこと言われたらますます行けねえわ……」
片付けが終わりそうだったので、ちょっと聞いてみることにした。
「ツバサくんって剣道強いですよね?」
「え? まあ、弱くはないと思うけど……」
「どちらで教えてもらっていたんですか?」
「父さんの勧めで、近所の強い道場に行ってたよ」
「お父様もお強いんです?」
「……お前、何考えてんだよ」
「いえ、ちょっと興味本位で?」
「……めちゃくちゃ強いよ。若い頃は、多分県で一番とか、全国で指折り。それぐらい強い」
「ふーん」
「何するつもりだ」
「んー? ちょーっと、お手並み拝見したいなと思いまして」
「やめとけ」
「それは何故?」
「絶対怪我するから」
「それはないですね」
「なんでそう言い切れる」
心配そうにツバサは葵を見るけど、葵はにっこり笑っているだけ。
「わたし、強いって言ったでしょう?」
勝ち気に強気。そして、不敵に笑った。