すべてはあの花のために⑥

 彼が、友達を大切にしていることはよく知っているつもりだった。でも、素直にこぼれてくる真っ直ぐな言葉に、少し頭が追いつかない。


「そんな大切な人たちに、自分のことわかってもらうって、結構勇気いるよ」

「……何を、言ってるの……?」

「オレだってみんなに話したくないことだってあるけど、それがもしどこかで知られたら嫌だなって思うこと、いっぱいある」

「……?」

「でも友達じゃなかったら、……まあバレても別にいいやって思う」


 それでもようやく頭が追いついてきて、彼が今、一体何を言おうとしているのかがわかって。


「大切な人に嫌われたりするのが、オレは耐えられないってこと」

「……わたしが、ひ、……君を嫌うかもしれないって。そう思ってるの……?」

「………………」

「君が、必死で隠してることとか。バレたくないことをもし知って。……それで、わたしが君を嫌いになるのが、君は嫌だって。そういうこと……?」

「………………」

「ね、ねえ。何か言っ」

「ちょっと待ってて」

「へ……?」


 いきなり立ち上がったヒナタは、何も言わないまま部屋を出て行った。


「え。……え? ええー……?」


 また理解が追い付かなくて軽くパニックになっていると、すぐに彼は帰ってきた。


「正直、見せる気なんてなかったんだけど」

「えっと。よくわかるように説明を……」

「友達だってオレが認めて、その後嫌われるのだけは勘弁」

「……?」

「だから、今見せる。オレのこと嫌いになったら、もう一生オレと友達になろうとか言ってこないで」

「それ、一体どういう――……!?」


 ヒナタが持っていたのはあの、【赤い封筒】だった。


「はいどうぞ。あんたのだよ」


 葵はそれを、ヒナタに手渡された。


「まあこれ持ってて、英語語教室いて、クリスマスパーティーであんなことしたんだから、何でこんなの持ってるのかなんて。頭のいいあんたならすぐにわかるよね」


 ふっと嘲笑を浮かべるヒナタから、封筒から取り出した手元の紙へと視線を落とす。


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