すべてはあの花のために⑥

それはあの時、クリスマスパーティーのポスターの横にあったはずの、欠けた文章だった。
「(それじゃああの時、わたしが空き教室で見たのは、見間違いじゃなかったんだ……)」
「さっきオレは自分の立場で言ったけど、それはあんたのためでもある」
「…………」
「まさか友達が裏切り者だなんて知ったら、あんたが傷つくと思った。……よかったね。まだ友達じゃないうちにわかって」
彼は皮肉に笑うだけ。
「……こ、れ……」
「ん? 何?」
あまりにも小さくて聞こえなかったのか、ヒナタは少し身を屈めてくる。
「……もう、わたしがもらっても大丈夫?」
「は? そもそもあんたのだし」
了承を得た葵は、ヒナタの目の前でびりびりと手紙を破る。
その様子を、ヒナタは何も言わずにじっと見つめていた。
「……よし。こんなもんかな? これはどうしたの?」
「は? だから、ポスターに貼ってあったでしょ」
「うん。どうしてこれだけ貼らなかったの?」
「貼ろうとしたら、あんたが来たから」
「そっか。その日少し早めに登校したからねー」
先程よりも明るい葵に、ヒナタが怪訝な顔をする。
「何。こんなことされてまであんたはオレと友達になろうとしてんの」
「……ポスターを破ったのも君かい?」
「そうだけど?」
「停電させたのも? 前の日に体育館の屋根を開けたのも?」
「そうだね。ご名答」
「レンくんを巻き込んだのもそうなの?」
「はは。……うん。そう――」
言い切る前に、バチーンッ!! と葵はビンタを食らわした。
「……~~っ、つう……」
「ごめんね。わたし、どうしても体の方が先に動いてしまうから」
思い切り吹っ飛んだヒナタは、壁の方で頬を押さえてます。
とっても痛そうです。真っ赤な手形がついてます。
「……いっ、た……」
「ごめんごめん! あまりにもバカらしくって殴っちゃった!」