すべてはあの花のために⑥
『あなたは会った時からとても賢くて、何でもできて、すぐにわたしの執事になってくれました』
【しんとさんすごい! わたし今、とっても嬉しいです!】
【呼び捨てで構いませんお嬢様。……あと、お嬢様には武術系は勝てません……】
細い腕なのに、どうしてあんなに強いのか。当時はわからなかったな。
『でも、わたしの執事になる代わりに、あなたにとてもつらい仕事をさせてしまっていたのは事実です』
【ごめんっ。わたしのせいでっ……】
【何言ってるの葵。俺が好きでお前についてきたんだ。お前のそばにいられるなら、俺はこんなこと苦でも何でもないよ】
だって、お前の方がよっぽどつらい運命を背負ってるじゃないか。
『わたしの精神状態が不安定だったせいで、中学には通えませんでしたね。……でも、あなたのおかげで、高校には編入という形で、少し遅れてでしたが家の言う通り、桜へ入学することができました。あなたのおかげでわたしは、初めてのちゃんとした学校生活、とても楽しめたんですよ』
【シント! もう一回早戻し!】
【えー。何回美少女戦士見るの……】
お前にとって何が楽しいのかわからなくて、いろんなものをさせたりしたけど。……まさかアニメとか漫画をあそこまで好きになるとは思わなかったな。
『いろんなことがあったねシント。わたしの毎日に再び色が付いたのは、あなたのおかげでもあります』
【バカ〇ンとパパとハジ〇ちゃんごめんなさーいっ!】
【ハ〇メちゃんは天才だっ!】
『本当に楽しかった。急にあなたが執事になったり、素になったりと、コロコロ変わるのがもう見られないと思うと、寂しくもあります』
【何。そんなに襲われたいの】
【襲ったら解約するけど】
【さ、さあお嬢様、帰りましょう】
【すでに襲いかけたので減俸です】
『あなたの本当の名前も知られてよかった。シントが本名だと知った時、言わなかったけど、本当に嬉しかったんです。アキラくんともカエデさんとも話すことができて、本当によかった。勇気、出してくれてありがとう。シント』
【偉いね。よくできました】
【……っはあ……】
『あなたはこんなわたしを愛してくれた。時間のないわたしを。こんな、気味が悪いわたしを。……でも、とっても嬉しかった。幸せに、してあげられなくてごめんね』
【俺を助けてくれたのは道明寺じゃない。葵じゃん。そんな俺の恩人のために、愛しい人のために尽くして何が悪い!】
【シント……】
【今度は俺が助けてやりたいって思うことの、……っ。なにが悪いっ!】
あの頃を思い出す度、ぽろぽろ……と勝手に涙が溢れた。
『家の仕事をしながら、わたしのお世話も毎日してくれて、本当にありがとう』
【それで~、♡♡♡♡=モエモエということかと思いまして~。勝手に解釈したあと、あ! もしかしてこれって愛情のこと? それならラブ注入してあげないと! と、ケチャップ持って待ってたんですう~】
【……これぞ教育の賜物】
【いいから早く座ってくれる? ラブ注入し終わったら着替えるんだから】
……正直、これは思い出さない方がよかったけど。