すべてはあの花のために⑦
葵はもちろんSクラスになることができた。他の生徒会メンバーも同様、無事にSクラスで持ち上がったようだ。3-Sの担任も、もちろん持ち上がりでキクが担当することに。
『はじめまして……と言っても、私の顔を知ってる人はいっぱいいるかしら? 新しく就任しました。雨宮梢と申します。久し振りですね皆さん』
そして、新しくこの桜の“高等部”に就任した彼女が、新しい2-Sの担任となった。みんなは事前に知ってはいたものの、はじめて知った時は驚いていた。
そして今日は、生徒会で集まることはない。
HRが午前中に終わると、みんながさっさと教室から出て行く。
「葵。今からみんなで俺の家に来るんだが、お前もよかったらどうだ」
「……お誘いいただきありがとうございます。でも、どうしてもこれから外せない用事がありますので、わたしはこれで失礼致しますね」
葵は新たな生徒会メンバーの投票用紙を手に持ち、教室を出て行った。
「やっぱり、あっちゃんなんかあるんじゃないかな……」
彼女があれを外していたのは、生徒会室だけだ。少し例外はあったが、そこでならいつも外してくれていた。
「もうアオイちゃんは、あのままなのかな……」
ずっと完璧過ぎて、葵に隙がない。完璧過ぎて、近づくのが怖いんだ。
「……まるで、『来るな』って言われてるようなもんだ、あれじゃ」
「あきクン。話、聞かせてくれるんだよね」
「ああ。でも皇で話そう。あと杜真も呼ぶ。菊は……無理か。理事長は…………、絶対なんか知ってるだろうが、言わないんだろう」
悔しさに、握った拳に力が入る。
そうこうしていたら、2年生になった三人が3年のクラスまでやって来た。
「あっくん……」
「アキくん。話してくれるんだよね」
「アキ。教えろ」
彼らも切羽詰まったような表情だ。
「もちろんだ。まずは投票して、それから一緒に皇へ来てくれ」
みんなは投票の紙をボックスへ入れたあと、皇へと向かった。
道中、靴と服の擦れる音、焦る息づかいだけが聞こえていた。