すべてはあの花のために❾

「……それじゃあアイ。もう一度聞くけど、オレにつく気はある? オレがアイを、あいつを……まあ嫌だけど、アイが言うならついでのついで。本当のついでにアイのお父さんも助けてあげなくもないけど」

「父さんはね、元はあんな人じゃなかったんだ」

「……何それ。オレ知らない」

「もう。ずっと前の話だよ」


 それからアイは、やさしかった頃の父の話を、本当の母の話を。今の母親であるエリカや、秘書が来てからおかしくなったことを話し出した。


「……ふーん。そっか」


 そんな昔のことなら、アオイが知らなくても同然だ。でもそうなったら、本当に父親を助けてやらないといけない。


「……アイの本当の母親は? 今どうしてるの?」


 普通に説得に使えるかも知れないと思ったんだ。ただ、普通にそう聞いたんだけど。


「……死んだよ」

「……ごめん」

「いや。殺されたと言った方がいいのかもしれない」

「……どういうこと、それ」

「俺も、聞いた話だから。本当ところはわからないんだ」


 母のアズサは、桜の病院で死亡したと、そう聞いたらしい。


「それも、母さんが死んだのは、聞いただいぶ前だったりしたからさ。葬式だってなんだって、俺も父さんも知らされてなかったんだ」


 でも、本当なら助かる病気だったのに、無能な医師たちのせいで母は死んだんだと。そう聞かされたようだ。


「きっと、そのことが原因なんじゃないかと思うんだ。父さんが、桜を散らすことを決めたのは」

「……そう」


 でも、そんな話理事長から聞かされていない。まあ、外部に漏らさないようにしているのかもしれないけれど。


「人から聞いたことを素直に受け止めることも必要だと思う。でも、そこはちゃんと確かめよう」

「うん。わかってるよ」

「……アイ。父親はあんなことしてるから、流石に難しいかもしれない」

「……うん。十分、わかってる」

「でも、罪は軽くすることができるかもしれないから、オレも全力で手を貸すよ」

「……うん。ありがとう」


 頭を下げたアイの肩は、小さく震えていた。


「(母親が死んだのが桜だったから、海棠に目をつけたってことか)」


 これは、理事長に話を聞くべきだな。


「オレが丸っと全部。絶対に助けてあげる。……アイ。だからオレについて欲しい。絶対にアイたちを危ない目に遭わせたりはしない」

「……でも、今現に、あおいさんは危ない状態だ」

「じゃあ、それを気をつけたらアイはオレについてくれるの?」

「……そういうことをする時は。ちゃんと相談して欲しい」

「…………」

「もっと違う案があるかもしれないし、もっとギリギリにすることだってできるかもしれない」

「…………」

「だから。不用意にあおいさんを傷つけるようなことはしないで」


 ぐっと。手に力を入れてそう言う必死なアイに、なんだかおかしくなって小さく笑った。


「わかった。それでアイがオレについてくれるなら我慢する」

「我慢って……」

「九条その辺にしろ。アイさんをいじめて遊ぶな」

「え。俺、いじめられてたの……?」

「えー。レン言っちゃダメだよー」

「流石の私も我慢の限界だ」


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