すべてはあの花のために❾
「じゃあユズ、ギブアンドテイクね」
『え?』
「今までオレがいろいろユズのためにしてきてあげたから、今度はオレに返してね」
『え。それってもうさせる気ですよね?』
「そうだね。こうしなくてもすると思うけど、逃げ場は無くすよね」
『怖……!』
「オレがこんなことしてるって、絶対に言わないで欲しいんだ」
『え? なんで?』
「……あいつがもう、誰にも話さなくなるから」
『そっか。助けられなくなるんだっけ』
「そう。バレたらきっとそうなる。だから絶対に内緒にしてて? あいつ自身の話、別になんでもいいんだ。ユズが聞きやすいこと、それで十分」
『え? ど、どうやったら助けられるとか、聞かないといけないんじゃ……』
「いや、そもそも初めましてなのにそんなこと言われたら、絶対誰かに吹きこまれたって思うじゃん」
『あ。そっか』
「うん。だからほんとになんでもいいんだ。ユズがあいつから引き出しやすいこと。ほんの少しでもヒントになるかもしれないから、協力して欲しい」
『ひなくん……』
「もし、協力してくれなかったり、今のこと誰かに言っちゃったら……」
『え。ひ、ひなくん?』
「……あのこと、バラしちゃうから。みんなに」
『え!? どのこと!?』
「え。そんなの言っていいの? 口に出しちゃうよ? ユズ恥ずかしいじゃん」
『恥ずかしいこと?! なんだろ。……あれかな。パンツのゴムがビロビロになってるのに未だに履いてることとか? ……嫌! 恥ずかしいっ……』
「(……一人で盛り上がってる……)」
『わ、わかった。絶対に誰にも言わない』
「言ったら……」
『わかったからっ。絶対に言わないで……!』
「(……聞こえなかったことにしてあげよ……)」
弱みとか特に握れなかったからあんなこと言ってみたけど、一人で勝手に勘違いしてくれたみたいだ。いいような悪いような。
「うん。それじゃあまあ駒さん、いい働きを期待してます」
『へ? こ、駒??』
「駒は使ってなんぼだからね。頑張ってね、オレのために」
『えー……。その子のためじゃないの?』
「オレの心の安寧のために」
『お、おう。よくはわからんが、頑張ります!』
「うん。ありがと。それじゃあ午後にね」
そうして、なんとかもう一つの駒を手に入れた。
「さてと、チカ起こしに行かないと」
爆睡だったチカを蹴り飛ばして起こして、風呂に行くように促した。
「(ハナ、もう起きてるかな……)」
ちょっと覗きに行こうと思って、足をハナの寝ている部屋に進めたら、ちょっと戸が開いていた。
「(起きてる、のか……)」
どこかに行ったのかなと思っていたら、柱を背に膝を抱えて、下を向いて座り込んでいた。
「(なにが、あったの……)」
その小さな体が、苦しさから悲しさから。そんな感情で震えていた。