すべてはあの花のために❾

「女としてその少年は、少女に話しかけて仲良くなりました。……あの時、本当に死ぬのはオレの方だったんだ」


「九条くん……!」アイが驚きを隠せない。

「……九条くん、それは違うわ」先生はそう言ってくれる。


 でも、いいんだ。
 自分を責めてないとオレは。胸が押し潰されそうなくらい。後悔が。罪悪感が。……支配してくるんだから。


「だからアイ。許してあげる。オレがそう言ってるんだ。オレと、……それから、ハルナの代わりにオレが」

「……う、そ……」

「だからごめんって謝ったんだ。アイに気づいてたら、きっとまた違ってたんだろうって。アイがこんなに傷つくことはなかったんだろうって」

「……うそだ」

「嘘じゃないよ? どうやったら信じてくれる?」

「………………」

「言ったでしょ? ある時からオレは、あいつを助けるためだけに生きてるんだって。言ったでしょ? 知ってるのには、わけがあるんだって」

「………………」

「……オレとハルナは似過ぎてたからね。家は、きっと気づかなかったんだろうね」

「――……っ」

「アイが悪いことなんか一つもないよ。……聞けてよかった。あの時三人で遊びたかったね」

「……!! ……な、なまえ……」

「え?」

「なんて、呼ばれてた? なんて。呼んでた……?」

「……会話が聞こえるところに、アイはいたんだね」

「……あっ。お。俺、は……」


 オレは小さく笑ったあと、目を瞑った。


「ちょっと恥ずかしいけど。……でも、アイがそれでオレのこと信じてくれるって言うなら」


 笑って、答えてあげよう。


「ハナって呼んでた。花の妖精……ううん。花のお姫様みたいだったから」

「……!!」

「ルニって呼ばれてた。……あいつの花、向日葵なんだって。ロシア語から取ったって。あいつの名前を、オレがもらったんだ」

「はなちゃん。って。……るに、ちゃんって」

「……そう。あいつのことそう呼んでた。そう呼ばれてた」


 向日葵に引っかかったカオルとレンを放っておいて、オレらは会話を続けた。


「……どう? 信じてくれる? アイもオレについてくれる?」

「……ずっと。謝りたくて……」

「うん。いいよ? だって、ちゃんと話を聞いたらアイが悪いことなんて一つもない」

「……。俺も。……一緒に遊びたかった」

「うん。気づいてあげられなくて、ごめんね」

「勇気。……出せなくて。ごめんっ!」

「……そんなの、謝ることじゃないのに」


 ぽろぽろと。絨毯に涙の染みを作るアイは今、悔しさでいっぱいなんだろう。


「……アイ。もう一度言う。オレは、アイが欲しい」

「……。俺には。心に決めた人が……」

「その下りは無しにして」

「……俺で。いいの……?」

「うん。アイじゃなきゃダメ。アイじゃなきゃ嫌だ」

「……。こんな俺を。……必要としてくれるの……?」

「うん。……ていうか、アイもオレじゃないとダメでしょ? 許すって言った、オレじゃないと」

「……。九条、くん……」

「なんだか愛の告白みたいなんですけどお!」

「やめてくださいよ。考えないようにしてたのに。気持ちが悪いじゃないですか」

「なんだか禁断みたいね。ふふっ」

「……ちょっと、アイが早く答えないから変なこと言われてるんだけど」

「そ、そもそも。九条くんの言い方が悪いんだよ……!」

「知らないよそんなの。欲しいものは欲しいんだから」

「え……」

「いや。なんで引いてんの。早く答えてよ気持ち悪い」

「ええー!? なんで俺……!?」


 蔑むような目でオレが睨むと、ゴホンと咳払いして、アイはゆっくり目線を逸らした。


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