すべてはあの花のために❾
「シオンさんマサキさん。さっきのオレらの話には、嘘が混じってるんです」
そう言うと、オレを睨み付けるようにして二人が見てくる。流石は暴力団。人一人殺してそうな目つきだ。
「オレは、あなた方ならきっと味方になってくれると思うから話します」
「……どういうこと」
「ヒナタくんは何が言いたいんや」
「オレと一緒に、助けて欲しい人がいるんです」
「「…………」」
「あなた方ならきっと、協力してくれると思うから話します」
「……よく、わからないけど……」
「なんや。困っとるんかいな。それなら協力せんこともないで」
「まあそうだね。俺らのことすくい上げてくれたんだし?」
「そうそう」
「命をかけるほどの覚悟が必要なんです」
「「え」」
「聞いてください。お二人には、知っておいてもらいたい本当のことなんです」
――話そう。真実を。知ってもらおう。本当のことを。
そして。どうか。味方になって欲しい。
「まず、シオンさんの奥さんは蒸発したんじゃありません」
「「え」」
「今回の件は、その頃からもう始まっていたんです」
「……どういうこと」
「ここの組を邪魔だと思う人が、内側から壊していこうとしたんです」
「せやから奥さんをまずは消した言うんか」
「仲が良さそうだったことに目をつけたみたいです。それで奥さんは、何かしらのことを言われてここから出ていった」
「…………」
「でも組はそんなことでは崩れなかった。だから次はカナの周りの人間を使った」
「それが、美作さんと雨宮先生っちゅうわけやな」
「……ここの組に、二宮道場出の人たちがいますね」
「ああ、そうだね。マサキの下に付いてる奴がそいつらで」
「いいえ。今話しているのは、もういない奴らの方です」
「……なんでそれを、日向くんが知っとるんや」
「今その人たちは、ユズを。先生を襲った罪で牢屋に入っていますよね」
「え」
「ちょ。ちょっと待て……」
「多分あなた方は、彼らが先生を襲って捕まったことは知っているでしょう。でもそいつらが、ユズも襲った奴らだとは知らなかった。違いますか」
「……違わんで」
「いろいろ話が飛んで申し訳ないんですけど、そいつらは以前、二宮道場の師範たちを襲ったこともあるんです」
彼らの目つきがまた鋭くなる。
「でもその人たちは、本当にそんなことをするような人たちでしたか?」
「なんでそこまで知っとるんか。……せや。あいつらは誰よりもやさしくて、カナのことも組のことも大好きだった、やさしい奴らや。せやから、そんなことしたって信じられん」
「では何故、今もまだ牢屋に入っているんでしょう」
「それは……」
「そんなやさしい人たちが、どうして捕まっているのか。それも未だに。……それは、上手く騙されたからなんです」
「……そいつらが使われたって言うことか」
「俺らの組を壊そうとしとる奴らからか」
「大事に思うが故、だったんだと思います。その道場のことも、ここの組のことも。……恐らくまだ出られないのは、出ないようにさせられているからだと思います」
「……確かに、面会もさせてもらえなかった」
「そいつらが、誰からそんなことを言われたんかを外に出さんためか」
「そういうことだと思います。騙されたからといって、あんなことをしてしまったからと自ら入っている可能性もありますけど……そいつらから聞いたんじゃないですか。ユズと先生が、最低女だってこと」
「…………」
「そりゃ信じたくなりますよ。それだけやさしい、他人のことを思える人たちだったなら」
「…………」
「真相はこういうことです」