すべてはあの花のために❾

 オレは、指を一本ずつ立てながら話す。


「あなたたちには、あいつからいろいろ自分の話をさせるように誘導してもらいます」

「「ふむふむ」」

「それを必ず録音してください。それを、他の誰にも渡さずオレに渡してください。データは必ず消去してください」

「「え」」

「あなた方も知りたいんでしょう? だったら話すのが一番だ。……どうしてこんなことをしているのか? そんなの、あいつを助けるために必要なことだからですよ」

「「いやいや……」」

「だから、あなた方には犯罪者になってもらいます」

「「ええー?!」」


 そう言いながら両手を挙げて、縁側へ寝っ転がる彼らの鳩尾にもう一発ずつ食らわす。


「ふざけないでくださいよ」

「いやいやどっちが!?」

「え。オレマジで言ってますよ」

「え。そうなん?」

「あいつがオレらの前だったら話したがらないのは事情があるからなんです。でも、もしかしたらあなた方なら少しは話すかもしれない。だからそれを……あいつとの会話を必ず録音して欲しいんです。あいつから話すことに意味があるんです。あいつの口から話さないと、オレは信じられません」

「「…………」」

「聞き出してください、いろいろ。あいつ自身のことを。でも、今回の件に関してはなしです。あれは、オレらがあの時言ったこと。それからオレがさっき言ったことが事実ですから」

「……まあ、アオイちゃんはあの事件には関係ないからね」

「それでもこんな危ないところまで来てくれたんや。ほんと、もしかしたら死ぬところだったところに。せやから俺らが今度はあの子を……葵ちゃんを助けてやらんとな」

「あいつを助けてやりたいと思うなら。どうか、協力してください」

「でも、どうしてまた録音なんて」

「……これはもう、最終手段なんです」

「は?」

「そうならないことを祈ります。あいつがオレらの前で、自分のことを話してくれることを。でも、それをあいつが一番嫌がるから。だから、できることならこれは使いません。オレが取っておくだけです」

「…………」

「きっと、あなた方にもきちんとお話しする時があります。その時にはちゃんと、あいつの口からあいつ自身のことを話させます」

「……そうか」

「だから、どうかお願いします。あいつを助けるために。オレを、信じてください」


 深く深く、頭を下げる。こうするしか、オレに味方をつけることなんてできないから。


「どうしてこんなことをさせるのかも、いつかヒナタくんは話してくれるかな」

「はい。あいつが救われた時は必ず」

「そうか。せやったら、もし葵ちゃんを助けることができた時は、ちゃんと謝らせてな」

「え……」

「そうだね。こんなことするんだ。謝って済むことじゃないかもしれないけど……」

「い、いや。それはオレがあなた方にさせたことなんで……」

「いいや。俺らがやりたいからやるんや。そりゃ、日向くんに言われたからやけど、決めたんは俺らやからな」

「……じゃあ」

「ああ。きちんとその仕事を熟してみせるよ」

「任しとき」

「ありがとうございます……!」


 もう一度、深く頭を下げた。味方になってくれたお礼も、この程度しかオレにはできない。


「それから。美作さんと雨宮先生のところにも謝罪に行かないといけないね」

「せやなあ」

「(……先生。オレ、知りませんから)」


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