極氷御曹司の燃える愛で氷の女王は熱く溶ける~冷え切った契約結婚だったはずですが~
「思ってるわよ、ほら、しゃきっとしなさい」
私のお色直し後のアイスブルーのドレスの裾をつまみ、梨々花は唇を尖らせた。
「せっかくのドレスがしわになる」
「いいのよ、もう着ないし……ああ、疲れた」
クッションに頭を乗せた私の横に座り、梨々花はくすくすと笑う。
「ほら、氷の女王が形無しよ」
私の頭のティアラを梨々花はつついてからかって笑う。
「いいのよ、もう。今日はじゅうぶん頑張ったわ。苦手な笑顔だって作って見せたし」
そう言って目を閉じる私の背中を梨々花が撫でた。
「すごく綺麗だったわよ、お疲れ様。でも、噂で聞いていたより、あなたの旦那様、温かな感じね」
「……どこを見てそんな感想を? 契約結婚だって言ったでしょう」
披露宴中だって、一切親密な会話もなかった。私としてはもちろんそれでいいのだけれど。
思わず眉を寄せる私に、梨々花は不思議そうに言う。
「どこを見て、って。入場するときのエスコートや、披露宴中のあなたへの態度?」
「……ああ、式披露宴がスムーズにすむよう、仲睦まじく見えるようにという計算よ。そういう契約だし。そのへん、上手よね。私も見習わなくちゃ」
答えつつ、ふと、思い出してしまった。
綺麗だと言った宗之さんの低く甘く掠れた声だとか、私の手を握る彼の手の温かさだとか……。
慌てて脳内でかき消していると、梨々香は私の顔を覗き込みニンマリと笑う。
「本当に?」
「本当だって。あとは社交辞令よ。そうじゃなきゃ、わざわざ手を繋いだり、私に綺麗だって言ったりしないわ。そうする理由がないもの」
「ええっ、寒河江さんって絶対にお世辞言わないって有名じゃない」
私は目を瞬く。確かに宗之さんはそういう人だけれど……。梨々香は笑みを深める。
「やっぱり、自分の妻は別格なのね」
「やめてよ」
眉間を寄せると、コンコンとドアがノックされる。スタッフに案内され入ってきたのは、父の恋人の志津子さんだった。手には紙袋を持っている。
「わあ、素敵。似合ってるね、三花さん」
「志津子さん!」
私はだらけていたソファから立ち上がり、表情を整えて彼女のもとに向かう。
彼女の服装は、上品ではあるけれど、結婚式に参列するようなものではない。……招待できなかったのだ。