【マンガシナリオ】幼なじみと再会したら、予想外の求愛が始まりました

第2話 水輝とカラオケ



〇学校の空き教室・前回の続き

水輝「あーちゃん、俺と結婚してください」
朱莉「……っ」
※真剣な顔つきの水輝と、困惑顔の朱莉をアップで。

朱莉(水輝のこの顔、すごく真剣だ。多分、冗談ではないんだろうけど……)

朱莉「け、結婚の約束なんて、そんなのした覚えないから」
水輝「いや、したよ。今から10年前、俺が引っ越す前の日に」


 ※小学2年生の頃。母親の再婚で他県へ引っ越すことになった水輝が「大人になって再会したら、そのときはずっと一緒にいようね」と、公園で涙ながらに朱莉に話す回想シーン。


朱莉(言われてみれば昔、確かにそんなことを言われたような気もするけど……でも、あれが結婚の約束ってことになるの?)

水輝「ずっと一緒にいようっていうのは、結婚しようって意味だったんだよ」
朱莉(え。そんなの、今初めて知ったんだけど!)

朱莉「たとえそうだったとしても、あれから10年経つし。そんなのもう時効よ」
「それに、交際も何もかもすっ飛ばして、いきなり結婚とか無理!」

水輝「えー? 俺は、交際0日婚もアリだと思うけどな〜」

ニヤニヤしながら、水輝が整った顔を近づけてくる。
水輝の顔がドアップになり、朱莉は体を思いきり後ろに反らせた。

朱莉「ないないない! ていうか、私たち今は高校生だし、きちんと段階を踏まないと!」
水輝「段階……か」※考え込むような表情。
朱莉「とにかく! 私は今、誰とも付き合う気はないから。水輝には悪いけど、プロポーズはお断りします!」

キッパリと言い切ると、水輝からもらった薔薇の花を手に、朱莉は慌てて空き教室を出ていく。


○学校の廊下


朱莉(もう。何なのよ、さっきのは〜!)

顔を赤くさせ、早足で歩く朱莉。

朱莉「再会早々にいきなりプロポーズなんて、水輝ったら何を考えてるの!?」

ブツブツ言いながら早足で廊下を歩いていると、朱莉は廊下の角から出てきた真壁草太と思いきりぶつかってしまう。

朱莉「きゃっ!」
草太「うわ!」

草太は走ってきていたらしく、朱莉と勢いよくぶつかったせいで廊下に尻もちをついてしまった。

 ・真壁(まかべ)草太(そうた): 朱莉のクラスメイト。サッカー部エースで、黒髪短髪の爽やかイケメン。

朱莉「えっ、うそ。真壁くん!?」

ぶつかった相手が草太だと分かった朱莉は、途端に浮かない表情になる。

草太「ごめん、本郷さん……怪我はない?」
朱莉「いえ、大丈夫……こちらこそ、ごめんなさい」※冷静な顔に戻る
朱莉「あの、真壁くんこそ怪我は?」
草太「ああ、俺は大丈夫だから」
ひらひらと左右に振る草太の右手のひらには、かすり傷が。
それに気づいた朱莉は、目を見開く。

朱莉「真壁くん、手のひらに傷が……」
草太「ああ、これくらい舐めときゃ治るよ」
朱莉「待って」

口元に右手を持っていこうとした草太の腕を、朱莉が咄嗟に掴む。

朱莉「私、絆創膏持ってるから」

朱莉は、スクールバッグの中から絆創膏を取り出す。シートを剥がし、草太の手のひらに絆創膏を貼った。

草太「ありがとう。ていうか本郷さん、そのバラの花は?」

草太に聞かれた朱莉は、慌てて水輝からもらったバラの花を背中に隠す。

朱莉「あ、あなたには関係ないでしょう。ぶつかってしまって、本当にごめんなさい」
ペコッと頭を下げると、朱莉は急ぎ足で歩いて行く。
草太「……」
そんな朱莉の後ろ姿を見つめながら、草太が口の端を上げてポツリ。
草太「関係ない……か。それにしても本郷さんは、やっぱり変わらず優しいな」

朱莉を見つめる草太のそばを、水輝が通り過ぎていく。

水輝「あーちゃん!」

草太と別れて歩く朱莉に、後ろから走ってきた水輝が声をかける。

朱莉「なに?」
※眉を寄せ、追いかけてきたのかと少し迷惑そう。

水輝「あーちゃん、さっきは突然でびっくりさせちゃったよね。ごめんね」
朱莉(もしかして水輝、さっきのプロポーズのことを気にかけて、追いかけてきたの?)
朱莉「わ、分かってくれれば良いから」
水輝「うん。それでお願いなんだけど……あーちゃん、俺と付き合ってくれない?」
朱莉「え?」
水輝「結婚のお願いじゃなきゃ良いんでしょ?」※ニッコリと首を傾げて、可愛らしく


○駅前のカラオケ

水輝からクラスの親睦会に誘われた朱莉は、彼と一緒にカラオケ店にやって来た。

朱莉(『付き合って』って。てっきり交際のことかと思いきや、まさかカラオケだったなんて)

『あーちゃん、俺と一緒にクラスのカラオケに行ってくれない?』
『俺、今日転校してきたばかりで、知り合いは朱莉しかいないから。いてくれると安心』と話す、水輝の回想シーン。

朱莉(カラオケは得意じゃないけど。あんな子犬のようなきゅるんとした目でお願いされたら……断れないよ。)

朱莉の脳裏には、トイプードルになった水輝のデフォルメ絵。
昔から、トイプードル水輝には弱い朱莉。


水輝と二人で指定されたカラオケルームに入ると、先ほど学校の廊下で朱莉とぶつかった真壁草太もいた。

朱莉に気づいた草太が軽く手をあげ、朱莉は気まずい表情を浮かべながらも、ペコッと頭を下げる。
そんな二人を見て、水輝は首を傾げる。


カラオケの間も、歌わずにひとり黙々と勉強している朱莉。
ずっと参考書に視線を落としていた朱莉だったが、水輝が歌ってるときだけは耳を傾けていた。

朱莉(へえ。水輝って、歌も上手いんだ)
水輝の歌はプロ並みに上手く、高得点を叩き出した彼をすごいなと思う朱莉。

クラスメイトの女子「ねえ。せっかくだから、本郷さんも何か一曲歌ってよー」
朱莉「えっ!?」
朱莉(ど、どうしよう。私、歌うのは苦手なのに)

突然自分に振られ、困惑する朱莉に気づいた水輝が、朱莉に差し出されたマイクを横から奪い取る。

水輝「ねえ。今日の親睦会は、俺の歓迎会も兼ねてるんだよね? それなら、今日は俺にいっぱい歌わせてよ! 俺、歌うの好きなんだよね〜」

アップテンポな曲を入れ、水輝がテンション高めに歌い始める。

朱莉(……もしかして水輝、私のことを助けてくれた?)


○カラオケ店の廊下。ドリンクバーコーナー

朱莉が、ドリンクバーコーナーでいちごミルクを入れて、ストローでひと口飲んでいると。

水輝「いちごミルク、相変わらず好きなんだ?」
朱莉のあとを追いかけてきた水輝が、彼女の横に立つ。
朱莉「……甘いものは、勉強して疲れた脳にちょうど良いから」※澄ました顔で。
水輝「そっか。あーちゃん、子どもの頃からほんとに甘いものが好きだよね」

水輝の顔が朱莉が手にするグラスへと近づき、先ほど朱莉が口にしていたストローに吸い付いた。

朱莉「!?」
水輝「んん、めっちゃ甘っ」
朱莉「ちょ、ちょっと水輝……!」
朱莉(そのストロー、私が口つけたやつ!)
間接キスに、ストローと水輝の顔を交互に見る朱莉。
水輝「ふふ、味見だよ」
悪びれる様子もなく、自分の唇をペロッと舐める水輝。
それを見て、朱莉の顔がかあっと赤くなる。
水輝「あーちゃん、顔真っ赤。もしかして照れてるの?」

水輝が意地悪そうな顔で、朱莉にグッと顔を近づけたとき。

草太「本郷さん!」

廊下を走ってきた草太が、声をかけてきた。

草太「これ、借りてた本。ずっと返せてなかったから」
朱莉「返してくれなくても良かったのに」
草太から文庫本を受け取りながら、ボソッと。

草太「さっき学校で、絆創膏もありがとう。それじゃ」

爽やかに駆けていく草太を見ながら、水輝が尋ねる。

水輝「本の貸し借りなんて、仲良いんだね。あの人、友達?」
朱莉「真壁くんは、友達っていうか……」
ほんの少し間があったあと。
朱莉「……一応、私の元カレ」
水輝「え?」

朱莉の告白に、目を丸くして固まる水輝。

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