【マンガシナリオ】幼なじみと再会したら、予想外の求愛が始まりました
第3話 朱莉の過去
水輝(俺は、物心ついたときから幼なじみの朱莉のことが好きだった。)
○幼い頃の回想
水輝M【俺と朱莉は、家が近所の幼なじみ。生まれたときから俺が引っ越すまで、いつも一緒にいた】
子ども朱莉『水輝、早く来ないとおいていくわよ』
子ども水輝『待ってよ、あーちゃん〜!』
5歳の頃、家の近所の公園で追いかけっこをする二人。
子ども水輝『わああん。痛いよぉ』
子ども朱莉『ほら、水輝。泣かないの』
走っている途中で転んでしまった水輝に手を差し伸べ、立ち上がらせてあげる朱莉。
水輝【俺が転んでケガをしてしまったときは、朱莉が膝に絆創膏を貼って、頭を優しく撫でてくれた。
夕食のとき、俺が苦手なピーマンを残していると『一緒に食べるよ』と言って、朱莉は一緒に食べてくれたし。
小学校に入学してからは、頭の良い朱莉がよく俺の勉強を見てくれたりもした。】
【朱莉は同い年だけど、俺よりもしっかりしてて、お姉ちゃんみたいだった】
【幼い頃からどちらかというと愛想の良いほうではなかったけど、朱莉は意外と面倒見が良くて。
可愛くてかっこいい朱莉は、俺の憧れでもあり、ずっと好きな人だった】
【だから8歳の頃、シングルマザーだった母親が再婚することになり、県外へ引っ越すことになったときは、朱莉と離れるのが辛くてとにかく泣いた】
○水輝が引っ越す前日。近所の公園
子ども水輝『ヤダヤダ。僕、あーちゃんと離れたくないよ』
子ども朱莉『水輝、ワガママ言わないの』
泣きじゃくる水輝の目元の涙を、朱莉が指で拭ってあげる。
子ども朱莉『大きくなったら、きっとまた会えるよ』
子ども水輝『ほんと? それじゃあ、僕たちが大人になって再会したら、そのときはずっと一緒にいようね』
子ども朱莉『うん。約束』
【そうして俺たちは、互いの小指を絡めて指切りをしたのだった】
〈回想終了〉
水輝(県外へ引っ越して、そのあと親の仕事でアメリカに渡ってからも、俺は一日たりとも朱莉を忘れたことはなかった)
水輝(大人になったらずっと一緒にいられるよう、朱莉と結婚したいって思ってた。それなのに……)
○カラオケ店・廊下(※第2話の続き)
水輝「あの人、友達?」
朱莉「真壁くんは、友達っていうか……一応、私の元カレ」
水輝「え?」目が点。
水輝(元カレ!? う、うそだろ……まさか朱莉に、付き合っていた人がいたなんて)
(何だか失恋でもした気分だ……)
頭を抱えショックでうなだれる、水輝のデフォルメ絵。
朱莉「……まあ、元カレって言っても、すぐに別れたけどね」
水輝「どうして別れてしまったのか、理由を聞いてもいいの?」
黙り込み、迷うような素振りを見せる朱莉。
そして、意を決したように口を開く。
朱莉「……うん。先に言っておくけど、全然楽しい話じゃないから」
場所を移そうということになり、二人はカラオケを早めに切り上げ、家の近所の公園に向かう。
○家の近所の公園
昔よく二人で一緒に遊んだブランコに、それぞれ並んで腰かける朱莉と水輝。
朱莉「真壁くんとは、中学2年生のときに初めて同じクラスになったんだけど……」
◯朱莉の中学時代の回想
朱莉M【サッカー部でイケメンの真壁くんは、女の子からよくモテて友達も多くて。いつもクラスの中心にいた。だから、いつも教室の端っこにいた私とは、縁のない人だって思っていた】
○放課後。図書室
クラス替えから1ヶ月ほどが経ったある日。
学校の図書室の自習スペースで黙々と勉強する朱莉に、草太が声をかけてきた。
中学生の草太『本郷さん、頑張ってるね』
中学生の朱莉『!』
クラスで人気者の草太がいきなり声をかけてきて、目を見張る朱莉。
中学生の朱莉『……どうも』
だけど、なんてことのないように、すぐに参考書に視線を戻す。
中学生の草太『本郷さんって、放課後はいつもここで勉強してるよね?』
中学生の朱莉『えっ。どうしてそれを……』
中学生の草太『いつも、そこのグラウンドから見えてたから』
草太の言葉に、目を見開く朱莉。
中学生の朱莉(そうか。真壁くんはサッカー部だから)
そして、人気者の彼が自分のことを知ってくれていたのだと思うと、朱莉は少し嬉しくなった。
中学生の草太『俺も隣で一緒に勉強して良い?』
中学生の朱莉『……どうぞ』
朱莉【それ以来、真壁くんは部活が休みの日やテスト期間中は、よく図書室にやって来て。彼と一緒に過ごすことが増えた】
【たまに私が彼に勉強を教えたり。真壁くんの話はいつも面白くて。彼と一緒にいるとすごく心地が良かった】
【そして秋が深まってきた頃、私は真壁くんから告白された】
中学生の草太『俺、本郷さんが好きだ。俺と付き合ってほしい』
中学生の朱莉『……うん。いいよ』
朱莉【その頃の私は、まだ恋愛というものをよく分かっていなかったけど。真壁くんと一緒にいると、居心地が良くて。何より、いつも学校で一人だった私は、誰かに必要とされることが嬉しくて、OKした】
【だけど、彼と付き合って1ヶ月が過ぎた頃。私は、知ってしまったんだ】
○放課後の教室
誰もいない教室で、草太が友人と話している。忘れ物を取りにきた朱莉は、教室に入ろうとしたが、彼らの話が耳に入り足を止めた。
中学生の草太『なあ。俺、本郷さんとちゃんと付き合えたんだから。もし交際できたら奢るって話してたあの店の高いパフェ、ちゃんと俺に奢ってくれよな』
草太の友人『何だよ、草太。その話、忘れてなかったのかよ〜』
中学生の草太『あったりめーだろ。約束はきっちり守ってもらうからな!』
草太の友人『あーあ。オレは絶対、お前は本郷さんとは付き合えないって思ってたのになあ。変な賭けなんてするんじゃなかった』
中学生の朱莉『っ!』
教室の扉の近くで二人の会話を聞き、呆然とその場に立ち尽くす朱莉。
朱莉【教室で真壁くんと友達が話してるのを偶然聞いて、私は悟った。私はただ、友達との賭けで彼に告白されただけなのだと】
【そして、その後すぐに私は、真壁くんに別れを切り出した】
中学生の朱莉『私たち、別れよう』
中学生の草太『えっ!? どうしてだよ、急に』
中学生の朱莉『私、聞いちゃったの。真壁くんが友達との賭けで、私に告白してきたことを』
朱莉の言葉に、草太は目を見張る。
中学生の草太『あっ、あれは……本郷さんにずっと片想いしてて、なかなか告白できない俺を見かねた友達が、あんな提案を……』
中学生の朱莉『言い訳なんて聞きたくない。これからは、もう二度と私に関わらないで』
草太の言葉途中で、朱莉はその場から駆けだした。朱莉の目には、薄らと涙が。
朱莉【あれ以来私は、恋愛で傷つくくらいならもう恋なんてしない。誰とも付き合わず、一人で生きていこうって決めた。】
○回想終了・家の近所の公園に戻る
朱莉「……という訳なの」
水輝「そっか。あーちゃんに、昔そんなことが」
朱莉「だから、男の子からの告白は相手が誰であろうとすぐ断るし。水輝のプロポーズだって……」
朱莉(今までは、過去の恋愛のことなんて誰にも話したことがなかったのに)
(なぜか、幼なじみの水輝にだけは話してみたくなった)
水輝「話したくないことを、話してくれてありがとう」ニコッと優しく微笑む。
朱莉「こ、こちらこそ。聞いてくれて……ありがとう」※目をそらし、照れながら。
水輝「ねえ、あーちゃん。こんなときに、あれなんだけど……」
朱莉に、水輝が一通の手紙を渡してくる。
朱莉「これは?」
水輝「あーちゃんへのラブレターだよ」
朱莉「なっ!?」
朱莉(カラオケの途中から、何やらひとりで黙々と書いてるなって思っていたら……)
水輝「さっきは、いきなりプロポーズなんかして驚かせちゃったから」
水輝「改めて、俺の気持ちを手紙で書いてみたんだ。読んでみてよ」
朱莉がブランコに腰掛けたまま封筒を開いてみると、何枚もの便箋が収められていた。
そこには、朱莉への想いなどがきれいな筆跡でしたためられていた。
『物心ついたときから、ずっと朱莉のことが好きだった』
『俺は、いつも朱莉のことを考えている』
そして、細かく書かれた文字の中に、『社会人になったら、いつか俺と結婚して欲しい』という言葉があり、朱莉はドキリとする。
手書きの文字からは、水輝の並々ならぬ想いが伝わってくるような気がした。
手紙を読み終え、便箋から水輝のほうに目をやる朱莉。
水輝「俺は、離れている間もずっと、朱莉のことが忘れられなかったよ。朱莉を想うこの気持ちだけは、何ひとつ嘘なんてない」
朱莉(水輝、すごく真剣な目。この人はきっと、本気で私を好きでいてくれてるのだろう。でも……)
朱莉「水輝の気持ちは分かったけど、やっぱり私……」
水輝「待って」
改めて告白を断ろうとした朱莉だが、水輝の人差し指に唇を封じられ、続きを言うことは敵わなかった。
水輝「中学の頃、嫌な思いをして。今は、恋愛どころじゃないのかもしれない。だけど、俺は10年ぶりにこうして、やっとの思いであーちゃんに会えたから」
水輝が、朱莉の手を包み込むように握りしめる。
水輝「俺、朱莉に振られても簡単には諦めたくない。この想いが本気だって信じてもらえるように、頑張りたいって思ってる」
水輝に真剣な眼差しで見つめられ、朱莉の胸がドクンと大きく跳ねた。
水輝「これから一緒に過ごす中で、絶対に朱莉を振り向かせてみせるから……覚悟してて?」
朱莉【再会した幼なじみからの求愛は、これからもまだまだ続きそうです】