ワケアリ無気力くんが甘いです



──初日の授業恒例の自己紹介タイムが毎時間訪れ、次々と自己紹介していく生徒クラスメイト。


「はい、次の方ー」


「は、はいっ……黒羽 夜子、です。よろしくお願いします」


拍手と同時に着席する。

小さな声で言いたいが、もう一度と言われるのを避けるために声量は出したつもり。

ああ、本当自己紹介とか苦手っ。



「──先崎 優麗です」


猫背でペコ、と首だけのお辞儀をして座る。隣の列の前席にいる先崎くんに、目だけをむける。

……制服以外黒づくしだ。
襟足と前髪が少し長い黒髪に黒マスク。

まぁ、私も人のこと言えないけど。


「はぁ……」


高校に入ってからは、変な呼び方されることはなくなったけど……早く終わらないかなこの時間。

自己紹介をただ耳にしながら、私は窓の外を見た。

名前を何度も言わなきゃいけないこの時間は、私にとって──じごくだ。
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