ワケアリ無気力くんが甘いです
「アタシ夜子ちゃん妹とかヤバい!頑張んなさい、我が弟!可愛い弟!」
「なに言ってんのひとりで。こういう時だけ可愛いとか言われても微塵も嬉しくない。離れて近い」
顔を押し返す先崎くんは、お兄さんから離れるため四つん這いで、私の隣へ移動してくる。
顔が解放されたお兄さんは、なにやら髪を気にして。
「あ、もう。優麗のせいでウィッグずれたじゃない」
「知るか」
あーあ、と言いながらお兄さんはウェーブ髪のウィッグを外した。
え──外し……!?
「……夏は蒸れんだよなマジで。シャワー浴びてくるわ」
「ここでとんな」
これがリアルなお兄さんの姿──意外と短髪なんだ。
そのままドアの方へと歩き、振り返るお兄さんは、私に笑いかける。
「これからもそのバカ弟と仲良くしてやってね。勿論、アタ……僕ともね!」
「……はいっ」
笑った顔はウィッグをしてなくても、そのままだから、あまり違和感は感じなく笑い返せば『ごゆっくり!』と言ってお兄さんは行ってしまった。
「……はぁ、こりゃ毎度邪魔しに来るな。兄貴のやつ」
むすっ、とする先崎くんをなだめながら、私は夕方まで先崎くん家で過ごした。