推しが近所に住むなんて聞いてません!
遊園地なんて何年ぶりだろう。大学生の時以来だろうか。大人になると意外と行かなくなるもので、ワクワクしていた。マオくん何からのろう?ジェットコースターからかなー?と自分本位に話してしまった。今日は猫屋くんからの要望で「マオくん」と呼んでいる。

呆れたように、「あんたほんとにアラサー?遊園地くらいではしゃぐなんて中身子どもすぎ。」と猫屋くん。

「ご、ごめん!」というと

「素直すぎ。」と笑われてしまった。

なんだかんだ言いつつも、猫屋くんとの会話はとても心地が良くて、時が過ぎるのはあっという間だった。
お昼の時間まで、絶叫ばかり連れて行かれてしまった。私は特別絶叫が苦手というわけではないが、上から落ちる時にふわりとお腹が浮く感覚はちょっと怖いし、体力も相当消耗した。

「ちょっと待って…。休憩しよう。マオくんは、絶叫平気なの…?」

「あんた体力なすぎ...絶叫なんてしょっちゅうロケで行ってるし、体力なきゃやっていけないでしょ」

確かに、一週間前に放映されたCandyBoys★の番組『Candy調査隊!』でも絶叫に乗らされていたような..。え、でもテレビでは絶叫怖いキャラじゃなかった?と思いつつ、意外とキャラ作っているんだな、大変だなと思った。そんなことは言えないので、

「あ、そうか。芸能人だもん。そりゃそうだよね。」ととりあえず返す。

結局、カフェでお昼休憩することになった。
私はジャンボハンバーガー。猫屋くんは、サラダとアサイーヨーグルト…?

「ちょっとこのジャンボハンバーガーとヨーグルトの並び恥ずかしいな…」と私が二人のご飯を見比べながらいうと

「ほんと、よく食べるよね。体型管理とかない人はお気楽で羨ましいよ。」
と猫屋くんはいつも通り嫌味を言った後、

少し目を逸らし「でも俺は良く食べる人嫌いじゃない。」とサービストーク。

え、なにそれ!新しいファン獲得しようとしてるのか、この子は。それとも天然人垂らし?胸がドクンと音をたて、体温が上がるのを感じた。
ファンだとバレそうになるから、これ以上サービスはやめてくれ、と内心思う。

ご飯を食べ終えたところで、ようやく、言おうと思っていたことを切り出すことができた。

「あの、この前はありがとう…。私を家まで運んでくれて、仕事なのに、起きていてくれたんだね。その..これからは本当に気をつけるよ。」

「あー…」と罰が悪そうに、口をひらく。

「..その俺もごめん。ちょっと言いすぎた。」

と意外にも素直な猫屋くん。

「いつもは意地悪なことばかり言うけど優しいんだね。」

と言うと、「別に…誰にでもってわけじゃ」と照れたようにそっぽを向く。
「誰にでもってわけじゃ」という一言に、私は特別なのか、とちょっとした期待を抱きそうになったが、「前に助けたから恩返しみたいなものか。」と納得した。
午後はお化け屋敷から。テレビだと、泣きそうな目で怖がる様子が映されていたが、スリル好きな猫屋くんの姿を知れて嬉しい!と心から思った。
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