推しが近所に住むなんて聞いてません!
しばらく休んで、私たちは外に出た。外はすっかり日が落ちそうになっていた。
ゆっくりなら、歩くのも問題なかったが、安静にした方がいいが良いだろうと言う話になった。
帰り道に二人で向かう。楽しかったなーと言う気持ちと、もう少しここにいたいという名残惜しさが混ざり合う。ゲートに着く前に猫屋くんが立ち止まる。
「待って、最後に一つだけ乗ってもいい?」と猫屋くん。
そう言って彼が指差した先は、観覧車だった。
思わず「うん!いこう!」と喜びに身を任せ、走り出そうとしてしまうが、イテテテ…。
足捻挫してたんだった。
「バカじゃないの」と笑われる。
こういうやりとりがとても楽しくて、アイドルの時の猫屋くんよりも素の猫屋くんの方が好きかも、なんて思う。
観覧車に乗り、ゆっくりと二人きりの時間が流れ始める。
「ねえ、猫屋くんて本当に誰とも付き合ったことないの?」と唐突に聞くと、猫屋くんは「は?何急に。」と口を開けた。
あの演技を見ると、どうしても女性経験がないことが想像つかなかったのだ。
「…ないよ。一度も。」
彼は遠くの方を見つめてそう呟く。
にわかには信じがたいが、本当なのだろう。
「でも、ずっと探している人がいるんだ」そう続ける。
「…その人のこと好きなの?」そう問うと
「さあね。」とはぐらかされた。
猫屋くん好きな人いたんだ。そりゃあそうだよね。と妙に納得する。少し期待してしまっていた自分が恥ずかしくなる。何かあるたびに助けてくれて、優しくしてくれて、キスまでされて。私は凡人だけど少しなら可能性があるのかもって思ってしまっていた。今の状態だって、まるで少女漫画みたいじゃん。これで満足しなかったら神様に怒られるよきっと。そう思うのに、とっても苦しい。ああ、私この人のことをアイドルとして、ではなく人として好きになってしまったんだ。どうしようもないほどに。
とっても苦しくて今にも泣き出してしまいそうだったが、必死に耐えた。
「そっか−!そうだよね。トップアイドルも好きな人くらいいるか。会えるといいね」
「…まあね。あんたはどうなの?その、好きな人とかいるわけ?」
いるよ。目の前に。
「今は、いないかな。」
「ふーん、あんま経験なさそうだもんな」
と笑われた。
ほんと失礼な人。観覧車は本体幸せな場所だ。でも今はとっても苦しい。
もうすぐ地上だ。その時、
「あ、そうそう…」と猫屋くん。
「今日は、その、急だったけどさ、ありがとう。結構楽しかった。…由美子さん。」
「名前…!」
今、名前で呼んでくれた?「..うざ。いちいち反応すんなよ。」と小声で漏らす猫屋くん。
「私も!私の方がとっても...とっても楽しかった!」
必死で伝える。思わず涙が出てきた。
「何泣いてんだよ。ほんとおかしな人。」
猫屋くんはそう言ってちょっと困っている。
このままでもいい。友達でもいい。猫屋くんの特別になれなくても…。
それでも大切なひとに変わりはないから。
甘くもほろ苦い、そんな気持ちで帰宅した。
ゆっくりなら、歩くのも問題なかったが、安静にした方がいいが良いだろうと言う話になった。
帰り道に二人で向かう。楽しかったなーと言う気持ちと、もう少しここにいたいという名残惜しさが混ざり合う。ゲートに着く前に猫屋くんが立ち止まる。
「待って、最後に一つだけ乗ってもいい?」と猫屋くん。
そう言って彼が指差した先は、観覧車だった。
思わず「うん!いこう!」と喜びに身を任せ、走り出そうとしてしまうが、イテテテ…。
足捻挫してたんだった。
「バカじゃないの」と笑われる。
こういうやりとりがとても楽しくて、アイドルの時の猫屋くんよりも素の猫屋くんの方が好きかも、なんて思う。
観覧車に乗り、ゆっくりと二人きりの時間が流れ始める。
「ねえ、猫屋くんて本当に誰とも付き合ったことないの?」と唐突に聞くと、猫屋くんは「は?何急に。」と口を開けた。
あの演技を見ると、どうしても女性経験がないことが想像つかなかったのだ。
「…ないよ。一度も。」
彼は遠くの方を見つめてそう呟く。
にわかには信じがたいが、本当なのだろう。
「でも、ずっと探している人がいるんだ」そう続ける。
「…その人のこと好きなの?」そう問うと
「さあね。」とはぐらかされた。
猫屋くん好きな人いたんだ。そりゃあそうだよね。と妙に納得する。少し期待してしまっていた自分が恥ずかしくなる。何かあるたびに助けてくれて、優しくしてくれて、キスまでされて。私は凡人だけど少しなら可能性があるのかもって思ってしまっていた。今の状態だって、まるで少女漫画みたいじゃん。これで満足しなかったら神様に怒られるよきっと。そう思うのに、とっても苦しい。ああ、私この人のことをアイドルとして、ではなく人として好きになってしまったんだ。どうしようもないほどに。
とっても苦しくて今にも泣き出してしまいそうだったが、必死に耐えた。
「そっか−!そうだよね。トップアイドルも好きな人くらいいるか。会えるといいね」
「…まあね。あんたはどうなの?その、好きな人とかいるわけ?」
いるよ。目の前に。
「今は、いないかな。」
「ふーん、あんま経験なさそうだもんな」
と笑われた。
ほんと失礼な人。観覧車は本体幸せな場所だ。でも今はとっても苦しい。
もうすぐ地上だ。その時、
「あ、そうそう…」と猫屋くん。
「今日は、その、急だったけどさ、ありがとう。結構楽しかった。…由美子さん。」
「名前…!」
今、名前で呼んでくれた?「..うざ。いちいち反応すんなよ。」と小声で漏らす猫屋くん。
「私も!私の方がとっても...とっても楽しかった!」
必死で伝える。思わず涙が出てきた。
「何泣いてんだよ。ほんとおかしな人。」
猫屋くんはそう言ってちょっと困っている。
このままでもいい。友達でもいい。猫屋くんの特別になれなくても…。
それでも大切なひとに変わりはないから。
甘くもほろ苦い、そんな気持ちで帰宅した。