推しが近所に住むなんて聞いてません!
夜7時。行きつけの居酒屋で落ち合う。

「で、で、どうなのよ!その後猫屋くんとは…?」
席につくなり、興味津々な様子で、紗枝が尋ねてくる。

「はい。見事に撃沈しました。」

と結論から話す。

「え、え、まさか告ったわけ!?」と紗枝は驚きを隠せない様子。

「告ったわけではないんだ。一緒に遊園地へ行って、その時にずっと探している人がいるって。」

「一緒に遊園地行ったとかツッコミどころありまくりなんだけど…と、とりあえず、好きな人がいたってことか。現実だとアイドルも夢がないよねやっぱ。好きな人がいない方がおかしいもん。結局雲の上の存在ってことね〜」

「そうだね。でも夢見させてもらえただけありがたいよ。関われただけで少女漫画みたいだもん。」

正直いまだに傷は癒えていないが、笑いを作った。

「由美子…平気?」

紗枝は心配そうに訪ねてくる。
完璧に笑ったつもりだったが、親友の紗枝にはお見通しなようだ。

「正直、結構辛いんだ。推しの時の好きとは違って、素の猫屋くんのこと好きになっちゃった。アイドルの時とは違って悪魔みたいな性格だけど、真面目で優しくて、何度も救われて…」

「由美子…」

「でも、!好きな人の恋は応援しないと!よーし!飲むぞ!、あ、この前のライブの話教えてよ〜」

そのあとは、この前あったCandyBoys★のライブの話で盛り上がった。推しとして猫屋くんの話をする分にはとても楽しい。前回の反省を活かして、飲み過ぎには気をつけた。

「また、なんかあったらいつでも頼って。」

「うん、ありがとう。」

そう言って紗枝とは別れた。少しだけ気持ちがスッキリした。
でもまだ、まだあのバーには行けそうにない。直接会ったら悲しくなってしまうから…
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