推しが近所に住むなんて聞いてません!
「え、有元さんって家この近くなんですか?」

仕事を終えて、有元さんと一緒に会社を出た。

「うん。そうだよ。近くに住むと住宅手当出るし、出社も楽だから」

確かにそうだが、会社の近くなんって高くてとても住めない。有元さんは若くして、昇進したから、給料もそれなりに高いのだろう。

「いいな。私なんて○○駅ですよ。電車で40分はかかります。」

それは大変だな〜と有元さんが笑う。

「私も会社の近くに住もうかな…朝早いと大変なんですよね(笑)」

住めるわけないが、冗談めかしくいうと、有元さんは少しだけ真剣な表情で

「じゃあうち住む?」
と言った。

え、何言ってるの!?
「え、いやあのそれは…」
とあたふた困っていると、

「ははっ…冗談だよ!」と有元さんは笑っている。

「全く…女性にそういうことあんまり言わない方がいいと思いますよ...みんな期待しますよ。」
この人は天然なのか?それとも策士なのか。どちらかはわからないが、この人がモテる理由がよりわかった気がした。

「誰にでもいうわけじゃないんだけどな」
有元さんがそういったところで、会社の最寄り駅に着く。ここまで送ってきてくれたのだ。
私が言葉を返す前に、
「おやすみ!」と言って駆け出していく。

私もちょっとだけ大きな声で
「おやすみなさい!」と伝えた。
有元さんの甘い言葉に少しだけ心臓が跳ねている。
恋愛のことは考えるだけで苦しかったが、少しだけ心が軽くなった気がした。
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