推しが近所に住むなんて聞いてません!
「懐かしいな〜由美子さんはもうあゆむには会った?」
そう言ってありささんに問われる

「え、ああうん。たまにお話しするくらいだけど…」

「あゆむ今じゃトップアイドルなんでしょ?由美子さんも知り合いになれてラッキーね。...もしかしてファンだったりして」

ありさちゃんはニヤリとしながら聞いてきた。

「あ、違うよ!アイドルだって知ったのは出会った後で…!」

そう必死にいうとありさちゃんはあははと笑って

「冗談よ!ひろきに聞いたけど、あの子アイドルとプライベートはちゃんと分けてるみたいだから。それにしても、夢叶えたのね…」

そう言ってありさちゃんはしみじみとする。
その姿を見るに、猫屋くんとありさちゃんは何か特別な糸で結ばれていることが容易に想像できた。
それを聞く勇気は今の私にはなかった。猫屋くんの想い人がありさちゃんだとしたら?叶うはずもなかった。美男美女でとてもお似合い。この二人なら、猫屋くんがいくらトップアイドルといえども世間は祝福するだろう。

ぐちゃぐちゃとそんなことを考えながらぼーっとしてしまった。

「由美子さん?大丈夫?少し酔った?」

そう言ってありさちゃんが心配そうに訪ねてくれる。

そんなとき、深く帽子を被り、サングラスの男の子が帰ってきた。

「え、ありささん..?それに由美子さんも..!」

そう言って猫屋くんは驚いた様子だ。

「あ、ねこ..」
私がそう言いかけるとありさちゃんが「あゆむ…!」と大きな声を出し、猫屋くんにハグをした。

私の声は完全にかき消されてしまった。

「ありささん、いつ帰ってきたんすか?」
ハグされながらそう聞く猫屋くんは妙に懐かしそうだ。
「昨日帰ってきたの!今日からここでお世話になるからよろしくね!」

はい…?ここでお世話になるってどういうこと!?
いやいや色々急展開すぎるんですけど..
猫屋くんもかなり驚いた様子だった。ひろきさんに色々問い詰める猫屋くん。
どうやらサプライズだったらしい。

なんだか少し居づらくて、「あ、あの!私あしたも早いんで帰りますね..!」
そう言ってお代を置き、ありさちゃんと猫屋くんにも挨拶をして足早に帰った。

..結局猫屋くんとは話せなかった。
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