推しが近所に住むなんて聞いてません!
仕事を終え、またバーへと向かう。昨日逃げ出すように帰ってしまったため、少々足を踏み入れずらかった。バーのマスターに謝るため、と自分に言い聞かせつつも、本音は猫屋くんに会いたい一心だった。
バーに足を踏み入れると猫屋くんの姿はそこにはなかった。やっぱりか…と自分に言い聞かせつつ、カウンターに座る。
「あ、この前の!」とバーのマスター。
「はい。由美子です。この前は突然逃げ出すように帰ってすみません…」
「いやーあれは仕方ない。歩夢が悪いんだから。...飲み物何にする?」
「カンパリオレンジで。」
しばらくしてカンパリオレンジが運ばれる。
一息ついたところで、マスターが口をひらく。
「由美子ちゃんは知らないだろうけど、あいつ、トップアイドルなんだ。いつもはニコニコしているから疲れているんだろうね。普段は口が悪くってさ。でも真面目なやつなんだ。まだまだガキだけど許してやって。」
真面目なの..知ってます。と思わず言いそうになったが口をつぐむ。私はアイドルに興味がない設定なのだ。そう自分に言い聞かせ、口をひらく。
「あの、猫屋くん...でしたっけ?マスターは知り合いなんですか?」
「ああ、あいつの兄貴代わりってとこかな。あいつさ…」
マスターがそこまで言ったところで
「…るせえな。人の個人情報ペラペラ喋んなよ」
店の奥から、不機嫌そうに出てきたのは紛れもない、猫屋くんだった。
「あんた、またきたの?何?ストーカー?」
猫屋くんの髪はさっきまで寝ていたのかぴょこんと跳ねていた。
不機嫌そうに冷蔵庫から、缶ビールを取り出す。
「おいおい、営業中なんだから、そう言うことするな。」
んだよ、客いねーじゃんと言いながら、一応グラスにビールを注ぎ、一つ席を開けてカウンターに座る。
「で、オバさんなんの用?」と、威嚇するような目で私に目をむける。
「あんたとかオバさんって言わないで。まだ27なんだから。それに、私にはちゃんと名前が…」
「由美子。」
突然めんどくさそうに名前を言われ、思わず顔が赤くなる。
「一応恩人だし、名前くらい覚えてる。なんなの?名前呼ばれたくらいで顔赤くなっちゃってさ。まあ確かに俺はかっこいいけど、由美子さんってもしかして、男いたことないわけ?」
ニヤニヤと笑いながら、こちらを見てくる。
「い、いたことあるわよ!男くらい!!」
ムキになって思わずそう言ってしまったが、実際交際経験はない…。CandyBoys★がデビューした時からずっと推し活一筋だったから。お前のせいだ。と思ってしまったが、これ以上深掘りされたら大変なので、バーのマスター宏樹さんとの関係の話に戻す。
「(咳払い)...そんなことより、宏樹さんと猫屋くんはいつからの仲なんですか?さっき宏樹さんが兄みたいって言ってましたけど。」
その時猫屋くんが少しだけ複雑そうな顔をした。それは一瞬のことだった。すぐに彼はいつものめんどくさそうな顔に戻し話し始めた。
「兄貴だよ…俺にとっては。まあ色々あるんでね。部外者は口出ししないでもらえる?あ、あとさ、俺、ここに住んでんだ。」
「え?こ、ここに!?」
思わず声が大きくなる。憧れのアイドルが近所に住んでいると言うことだ。
「俺まあまあ稼いでるから、前はタワマンに一人暮らしだったんだけど、すぐにマスコミに目つけられたって訳よ。めんどくさくて、ここに引っ越してきたってわけ。ここなら、マスコミも気づきにくいだろうし。この店人気ないしね(笑)」
「…おい」
と力なき宏樹さんの声を挟みつつ、猫屋くんは話を続けた。
「まあファンじゃないなら、絡みやすいわ。毎週通うってことはあんたもどうせ近所なんだろ?よろしくね、由美子さん♪」
その時の私は猫屋くんの複雑な家庭状況のことは忘れていた。頭の中は推しが近所に引っ越してきたことでいっぱいだった。
バーに足を踏み入れると猫屋くんの姿はそこにはなかった。やっぱりか…と自分に言い聞かせつつ、カウンターに座る。
「あ、この前の!」とバーのマスター。
「はい。由美子です。この前は突然逃げ出すように帰ってすみません…」
「いやーあれは仕方ない。歩夢が悪いんだから。...飲み物何にする?」
「カンパリオレンジで。」
しばらくしてカンパリオレンジが運ばれる。
一息ついたところで、マスターが口をひらく。
「由美子ちゃんは知らないだろうけど、あいつ、トップアイドルなんだ。いつもはニコニコしているから疲れているんだろうね。普段は口が悪くってさ。でも真面目なやつなんだ。まだまだガキだけど許してやって。」
真面目なの..知ってます。と思わず言いそうになったが口をつぐむ。私はアイドルに興味がない設定なのだ。そう自分に言い聞かせ、口をひらく。
「あの、猫屋くん...でしたっけ?マスターは知り合いなんですか?」
「ああ、あいつの兄貴代わりってとこかな。あいつさ…」
マスターがそこまで言ったところで
「…るせえな。人の個人情報ペラペラ喋んなよ」
店の奥から、不機嫌そうに出てきたのは紛れもない、猫屋くんだった。
「あんた、またきたの?何?ストーカー?」
猫屋くんの髪はさっきまで寝ていたのかぴょこんと跳ねていた。
不機嫌そうに冷蔵庫から、缶ビールを取り出す。
「おいおい、営業中なんだから、そう言うことするな。」
んだよ、客いねーじゃんと言いながら、一応グラスにビールを注ぎ、一つ席を開けてカウンターに座る。
「で、オバさんなんの用?」と、威嚇するような目で私に目をむける。
「あんたとかオバさんって言わないで。まだ27なんだから。それに、私にはちゃんと名前が…」
「由美子。」
突然めんどくさそうに名前を言われ、思わず顔が赤くなる。
「一応恩人だし、名前くらい覚えてる。なんなの?名前呼ばれたくらいで顔赤くなっちゃってさ。まあ確かに俺はかっこいいけど、由美子さんってもしかして、男いたことないわけ?」
ニヤニヤと笑いながら、こちらを見てくる。
「い、いたことあるわよ!男くらい!!」
ムキになって思わずそう言ってしまったが、実際交際経験はない…。CandyBoys★がデビューした時からずっと推し活一筋だったから。お前のせいだ。と思ってしまったが、これ以上深掘りされたら大変なので、バーのマスター宏樹さんとの関係の話に戻す。
「(咳払い)...そんなことより、宏樹さんと猫屋くんはいつからの仲なんですか?さっき宏樹さんが兄みたいって言ってましたけど。」
その時猫屋くんが少しだけ複雑そうな顔をした。それは一瞬のことだった。すぐに彼はいつものめんどくさそうな顔に戻し話し始めた。
「兄貴だよ…俺にとっては。まあ色々あるんでね。部外者は口出ししないでもらえる?あ、あとさ、俺、ここに住んでんだ。」
「え?こ、ここに!?」
思わず声が大きくなる。憧れのアイドルが近所に住んでいると言うことだ。
「俺まあまあ稼いでるから、前はタワマンに一人暮らしだったんだけど、すぐにマスコミに目つけられたって訳よ。めんどくさくて、ここに引っ越してきたってわけ。ここなら、マスコミも気づきにくいだろうし。この店人気ないしね(笑)」
「…おい」
と力なき宏樹さんの声を挟みつつ、猫屋くんは話を続けた。
「まあファンじゃないなら、絡みやすいわ。毎週通うってことはあんたもどうせ近所なんだろ?よろしくね、由美子さん♪」
その時の私は猫屋くんの複雑な家庭状況のことは忘れていた。頭の中は推しが近所に引っ越してきたことでいっぱいだった。