推しが近所に住むなんて聞いてません!
「…ん、ここは」
目を覚ましたのは明け方4時。知らない場所だった。正直昨日のことはよく覚えていなかった。紗枝と飲んで、ちょっと飲みすぎて…それで…
とっても寒かったような暖かかったような...そんな断片的な記憶があるものの、よく思い出せなかった。
…というよりも今のことだ。オレンジ色の暗めの照明。ウッド調の棚に並べられているのは洋書に音楽雑誌。部屋の角にはアコースティックギターと植物。
オリエンタルなカーペットに、真っ白の布団。
「ここどこ?まさか誘拐?いやいや、誘拐してご丁寧に布団に寝かせてくれるわけ…」
部屋のドアは簡単に開いた。特に誘拐されたわけではないようだ。誰に連れてこられたのか、なぜここにいるのかよくわからないまま、廊下へと足を踏み入れる。廊下にはホテルのように二、三部屋あり、下に続く階段があった。降りてみると、そこは、いつものバーだった。一つだけつけられた、ライトの下で、猫屋くんが、読書をしていた。読書をするときはメガネをつけるのか…と思わずキュンとしてしまったが、
「ね、猫屋くん?」とおそるおそる話しかける。
あー起きたんだ、とでもいうようにこちらをジロリと睨み、ふわりとあくびをした。
「ひろ兄寝てるから静かにしろよな」と猫屋くん。
特に状況説明をしてくれる様子はなさそうだ。その様子を見るにとっても眠そうだった。まさか私が起きた時のために待っていてくれたのだろうか?
「あの、ごめん、私あんまり覚えてなくて…」
というと「は?マジかよ」と呆れた様子で話を続けた。
「倒れてたんだよ。店の近くの細い路地で。しかもこんな寒い時にさ。凍死したいのかと思ったわ。」
不機嫌そうに、心配そうに、目を逸らしながら話す。それを聞いてああ、酔っ払って寝ちゃったのか、と記憶が蘇る。猫屋くんが見つけたってことはまさかあのふわりとした感覚は猫屋くんが運んでくれたからなのだろうか。
「あ、そうだったんだ。ありがとう。多分飲みすぎて、寝ちゃって..あ、でも運んでくれて」
お礼を言おうとしたところで、猫屋くんが目を丸くして話を挟んできた。
「飲み過ぎ…?いい歳してそんなことで人に迷惑かけんなよ!」
猫屋くんは少しだけ声を荒げてそういう。
「ご、ごめん!...なさい」
急に怒られて少しびっくりしてしまった。分別のある大人が飲み過ぎて、それで5歳も年下の男の子に迷惑をかけるなんて不甲斐ないなと思う。嫌われたかな?そんな不安が頭の中をぐるぐると駆け巡る。
ピンと張り詰めた空気が流れ、しばらく沈黙が続く。
「まあ、助けたんだ。仮は返したから…てか起きたならもう帰れよ。」と呆れたように言われ、
「助けてくれてありがとう…」と言い残しバーを出た。
猫屋くんがあそこまで怒るのは少し予想外だった。まだ、私は彼のことは何も知らないんだな、と思い知らされたような感じがした。
トボトボと家に帰り、少し沈んだ気持ちで、しばらく布団に座りぼーっとしていた。
猫屋くんはトップアイドルだ。きっと今日も仕事があるに違いない。それでも、起きた時に困らないように、と、明け方まで起きていてくれたのか。もう少しちゃんとお礼言えばよかったなと思う。
また、ちゃんとお礼伝えに行こう…。あのまま外で寝ていたら、風邪は引いていただろうし、誰かに襲われていたのかもしれない。猫屋くんに見つけられたのは本当に幸運だった。
目を覚ましたのは明け方4時。知らない場所だった。正直昨日のことはよく覚えていなかった。紗枝と飲んで、ちょっと飲みすぎて…それで…
とっても寒かったような暖かかったような...そんな断片的な記憶があるものの、よく思い出せなかった。
…というよりも今のことだ。オレンジ色の暗めの照明。ウッド調の棚に並べられているのは洋書に音楽雑誌。部屋の角にはアコースティックギターと植物。
オリエンタルなカーペットに、真っ白の布団。
「ここどこ?まさか誘拐?いやいや、誘拐してご丁寧に布団に寝かせてくれるわけ…」
部屋のドアは簡単に開いた。特に誘拐されたわけではないようだ。誰に連れてこられたのか、なぜここにいるのかよくわからないまま、廊下へと足を踏み入れる。廊下にはホテルのように二、三部屋あり、下に続く階段があった。降りてみると、そこは、いつものバーだった。一つだけつけられた、ライトの下で、猫屋くんが、読書をしていた。読書をするときはメガネをつけるのか…と思わずキュンとしてしまったが、
「ね、猫屋くん?」とおそるおそる話しかける。
あー起きたんだ、とでもいうようにこちらをジロリと睨み、ふわりとあくびをした。
「ひろ兄寝てるから静かにしろよな」と猫屋くん。
特に状況説明をしてくれる様子はなさそうだ。その様子を見るにとっても眠そうだった。まさか私が起きた時のために待っていてくれたのだろうか?
「あの、ごめん、私あんまり覚えてなくて…」
というと「は?マジかよ」と呆れた様子で話を続けた。
「倒れてたんだよ。店の近くの細い路地で。しかもこんな寒い時にさ。凍死したいのかと思ったわ。」
不機嫌そうに、心配そうに、目を逸らしながら話す。それを聞いてああ、酔っ払って寝ちゃったのか、と記憶が蘇る。猫屋くんが見つけたってことはまさかあのふわりとした感覚は猫屋くんが運んでくれたからなのだろうか。
「あ、そうだったんだ。ありがとう。多分飲みすぎて、寝ちゃって..あ、でも運んでくれて」
お礼を言おうとしたところで、猫屋くんが目を丸くして話を挟んできた。
「飲み過ぎ…?いい歳してそんなことで人に迷惑かけんなよ!」
猫屋くんは少しだけ声を荒げてそういう。
「ご、ごめん!...なさい」
急に怒られて少しびっくりしてしまった。分別のある大人が飲み過ぎて、それで5歳も年下の男の子に迷惑をかけるなんて不甲斐ないなと思う。嫌われたかな?そんな不安が頭の中をぐるぐると駆け巡る。
ピンと張り詰めた空気が流れ、しばらく沈黙が続く。
「まあ、助けたんだ。仮は返したから…てか起きたならもう帰れよ。」と呆れたように言われ、
「助けてくれてありがとう…」と言い残しバーを出た。
猫屋くんがあそこまで怒るのは少し予想外だった。まだ、私は彼のことは何も知らないんだな、と思い知らされたような感じがした。
トボトボと家に帰り、少し沈んだ気持ちで、しばらく布団に座りぼーっとしていた。
猫屋くんはトップアイドルだ。きっと今日も仕事があるに違いない。それでも、起きた時に困らないように、と、明け方まで起きていてくれたのか。もう少しちゃんとお礼言えばよかったなと思う。
また、ちゃんとお礼伝えに行こう…。あのまま外で寝ていたら、風邪は引いていただろうし、誰かに襲われていたのかもしれない。猫屋くんに見つけられたのは本当に幸運だった。