歪んだ月が愛しくて1
立夏Side
浅い眠りからぼんやりと目覚めた直後、俺―――藤岡立夏の視界に飛び込んで来たのは窓から射し込む眩しい光だった。
「……ん…」
覚醒しきれていない頭のままベッドの上で寝返りを打つと枕元に置いたスマートフォンに手を伸ばす。
ディスプレイをタップして時間を確認すれば既に13時を回っていた。
一度はスマートフォンを枕元に戻して再び眠りに付こうとしたが、すぐに初期設定のままの着信音で目を覚ます。
ディスプレイを確認すると着信22件とメール受信1件の表示にある人物を連想した。
どうかあの男だけではありませんようにとささやかな祈りを込めながらメール画面を開いた。
「………で、何?」
開口一番、目の前の男に咎めるような視線を送る。
「おうおう、機嫌悪ぃな。もう昼過ぎだってのにまだおねむか?」
前髪を流した妖艶でアダルティーな雰囲気を纏う黒髪の男は黒革のソファーに身を預け見せ付けるかのように長い足を組み直してニヤニヤと憎たらしい笑みを浮かべている。
「……誰のせいだよ」
ここは鏡ノ院家の別邸。
二度寝直後に受信した「今すぐ来い」とのメールで仕方なくこの場所へとやって来た。
そしてこの男は鏡ノ院文月。
死んだ義母さんの弟で俺の叔父にあたる存在だ。
「俺様か?」
アンタ以外に誰がいる。
「そう睨むなよ。話が済めばちゃんと帰してやるさ」
「俺にはない」
「お前になくても俺様にはある」
「今更何話すって言うんだよ」
「まあ、本来なら俺様が出しゃばることじゃねぇんだがな」
なら出しゃばるな、と内心悪態を吐く。
そもそも文月さんの態度は話がある人のものではない。
尊大で横柄で上から目線で何様かと疑いたくなる。しかも一人称が俺様。本当何様だよ。
話したくない、関わりたくない、近付きたくない、と思ってしまうのは仕方ないことだと思う。
それに文月さんと面と向かって話すのはあの日以来なのだから。