本当の愛を知るまでは
52階に着き、光星のオフィスのドアの前まで来ると、花純は深呼吸する。
意を決してドアをノックするが、返事は返って来なかった。
(不在なのかしら)
そう思って引き返そうとした時、カチャリとかすかにドアが開く。
「森川さん?」
「臼井さん! あの、光星さんは?」
険しい表情の臼井がそっとうかがうようにドアから少し顔を覗かせ、花純は詰め寄った。
「光星さんは今どこに? あの記事は一体……」
臼井は視線を落としてから暗い表情のままドアを開いた。
「……どうぞ、お入りください」
「はい。失礼いたします」
気持ちを落ち着かせようと胸に手を当て、緊張の面持ちで足を踏み入れる。
見慣れた大きなデスクで、光星が誰かと電話で話していた。
だがいつもの光星とは明らかに様子が違う。
焦りや怒りがにじみ出るような口調で、懸命に何かを相手に訴えていた。
(光星さん……)
花純は言葉もなくその場に立ち尽くす。
「……分かりました。それならこちらも法的措置を取らせていただきますので。……はい、失礼します」
光星は通話を終えると大きく息を吐き、組んだ両手に顔を伏せた。
「社長、森川さんがいらしてます」
臼井の声にハッと顔を上げた光星が、花純を見て急いで立ち上がる。
「花純! 大丈夫だったか? 何か聞かれたりしなかった?」
「あ、はい。ビルのエントランスで取り囲まれましたが、何も答えませんでした」
「そうか……」
臼井に促されて、二人でソファに座った。
意を決してドアをノックするが、返事は返って来なかった。
(不在なのかしら)
そう思って引き返そうとした時、カチャリとかすかにドアが開く。
「森川さん?」
「臼井さん! あの、光星さんは?」
険しい表情の臼井がそっとうかがうようにドアから少し顔を覗かせ、花純は詰め寄った。
「光星さんは今どこに? あの記事は一体……」
臼井は視線を落としてから暗い表情のままドアを開いた。
「……どうぞ、お入りください」
「はい。失礼いたします」
気持ちを落ち着かせようと胸に手を当て、緊張の面持ちで足を踏み入れる。
見慣れた大きなデスクで、光星が誰かと電話で話していた。
だがいつもの光星とは明らかに様子が違う。
焦りや怒りがにじみ出るような口調で、懸命に何かを相手に訴えていた。
(光星さん……)
花純は言葉もなくその場に立ち尽くす。
「……分かりました。それならこちらも法的措置を取らせていただきますので。……はい、失礼します」
光星は通話を終えると大きく息を吐き、組んだ両手に顔を伏せた。
「社長、森川さんがいらしてます」
臼井の声にハッと顔を上げた光星が、花純を見て急いで立ち上がる。
「花純! 大丈夫だったか? 何か聞かれたりしなかった?」
「あ、はい。ビルのエントランスで取り囲まれましたが、何も答えませんでした」
「そうか……」
臼井に促されて、二人でソファに座った。