眠る彼女の世話係(改訂版)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 その後彼女は、夜の12時になるまでぽつりぽつりと少しだけ話して、薬とゼリーを飲んで眠った。それを見てから……おそらく俺も眠ってしまったのだろう。たった今起きたばかりの俺は、時計の針が8時を指していることに気がついて、大学に間に合わない、と慌ただしく荷物をまとめ始めた。

 彼女は再び眠りについていた。彼女は、その寝相が1番しっくりくるのか、初めて会った時と同じような寝方をしている。そんな彼女に「おはよう」とだけ呟いて、彼女の家を後にした。



「で、どうだった?喋れた?あの女の子と」

 昼、学食に集まった陽太と陸斗は、いじり倒す気満々なのかいつもよりも身を前に乗り出している。

「話せたよ、一応」

 自分たちの予想に反した返事に2人は豆鉄砲を食らったかのような顔をして、財布からすっと500円を差し出してくる。

「え?何これ」
「いや〜……えっと」

 お金を受け取らないでいると陸斗と陽太は顔を見合わせて、陽太がためらいながらも話し出す。

「俺が、バイトクビになる、で陸斗が担当外される、で賭けてたんだよね、500円」
「そうそう……でも2人とも外しちゃったからさ」

「お前らなぁ……」

 そんな2人に呆れながらもそう言うことなら、と500円ずつ受け取る。

「んじゃ今日は天丼のトッピング豪華にでもすっかな」
「基本的にいつも金欠だもんね、バイト長く続かないから」

 そういたずらめいた表情で言う陸斗の足を蹴り飛ばして、奴が悶えているうちに俺はそそくさと食堂の列に並びに行った。
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