Drive Someone Nuts
「大学生だから、色々あるんですよ。テストとか単位とか」
「学業は学生の本分だからね。だけどモラトリアムも大切にしなよ、ほら、京都の大学生はよく言うじゃん。少ない大学期間に思いを馳せて鴨川の河川敷に寝そべったり語ったりしてるって」
「都市伝説なのかなって思ってましたけど」
「こればっかりは実際に見てみないとね、あ、今日岡田君に今月の新作ケーキピスタチオといちごのタルトって言ってきて」

 げ。と思うが顔には出さない。マスターの表情は読めない。
 たまに新メニューの案内を任されることがあるがまさか今日がその日だとは運が悪いのかいいのか、それとも察せられているのか。心境を隠しながら、はぁいと新メニューの案内表を持っていく。

 岡田さんの元に寄ると気付いたのか、ふんわりと笑う。高瀬も自然に笑顔になる。

「新作の案内ですか?」
「そうです。ピスタチオといちごのタルトです」

 案内表を渡す。マスターオリジナルのイラストに直接詳細が書き込まれている。
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