Drive Someone Nuts
「美味しそう、いいね」
「こないだ試食させてもらったんですけど、ピスタチオクリームの濃さといちごの甘酸っぱさが絶妙で。見た目も可愛らしかったです、いつもはもっと無骨なケーキですけど」

 最近映えも意識しているらしい、っていうのはマスターの娘がもっと可愛いケーキを作ってほしいと要望があったからだそうだ。

「確かに……こないだぶりに話せて嬉しいですね、なんか」

 つるり、とこともなげにそれをいうのはずるくないか。マスターに悟られたくないのにほんのり顔が熱くなってる気がする。ごまかすように「ですね!」とやや強調して同意してメニューの説明を続けた。ピスタチオといちごのケーキは今度にするとのことだった。去り際にエプロンのポケットに小さくおったメモ用紙を入れられる。岡田さんは口パクで後でね、と言って暫くしてから店を出た。

 バックヤードに水を飲みに行くタイミングで、ポケットからメモを取り出すと住所と時間が書いていた。不都合だったら連絡してとのことだった。バイトがある日はバイトしか予定は詰めないけれど、せっかくのお誘いだ。ここはそのお誘いに乗りたい。
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