Drive Someone Nuts
 マスターはお帰り、とお皿を布巾で拭いていた。

「岡田さん頼まなかったね、珍しい」

 岡田さんのワードが出て虚を突かれる。珍しいのも事実だ、甘いものには目がないから。

「確かに珍しい、ですね」
「苦手なものとかあったって言ってた?」
「いや特に何も」

 マスターはぽりぽりと後頭部を掻く。

「彼は本心で話してるかどうかわかりにくいタイプだからな…豆が好きなのは分かるんだけど」
「そうなんですか?」

 よく話しているから、そうは見えなかった。どちらかというと岡田さんに心を開いているようだった。

「あぁ、普段オッサンばっかり相手してると、オッサンは寂しがり屋だから直ぐに心開いてくることに慣れててね。その点若者の岡田さんは話していても一切自分の事は言わないからね、お店のことばっかりだよ」
「たしかにうちの店、陽気なおじさん多いですよね」
「みんな寂しいんだよ、じゃないと長居なんてしないだろう?結構話してくる奴に限っては」
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