Drive Someone Nuts
 そう思わせる仕草を無意識でとっていたのかもしれない、と思ったしこの言葉がポジティブな要素なのかネガティブな要素なのかはっきりと分からなかった。
 ただ岡田さんと話すとき、肩の力が抜ける。息がつまらない。
 岡田さんが持つ独特な雰囲気が人をリラックスさせるのかどうかはわからないけれど、居心地が良いのだ。

「…岡田さんがそうさせているんですよ」
「え、口説いてます?」
「真面目に、言ってます。知らなかったですか?」

 少し強くそう問えば、視線が揺らいだ気がした。

「……知らなかった、というか驚いているというか」

 動揺しているのは確かでグラスの持つ手が微かに震えていた。一気にシャンディガフを煽って、口元を押さえる。聞き取れない音量でぼそりと呟く。無意識な言葉だったと思う。

「……お……と……ち……」

 その声を脳がうまく拾うことはできなかった。
 高瀬はその言葉を無かったことにして、話題を変えようとした。聞き返せば、何かが崩れていくような恐怖が勝った。久々に心を開いた相手で、告白まがいなこともした。
 ただ、岡田さんはその言葉を阻んだ。机に置いた高瀬のやり場のない手を上から両手で包んだ。大きくて熱い。でも見つめる瞳に熱はない。それなのに対照的な言葉を吐いた。
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