Drive Someone Nuts
 今全力で楽しむしかない。
 お腹を押さえたポーズを取ると、彼の表情が綻んだ。
 あ、そんな風に笑うのか。

「良かった。実は俺もなんです」

 案内してくれたお店はそのショッピングモールから五分程歩いた住宅地の中にあるお店だった。木の扉に赤と青と白の国旗のカラーの暖簾がかかっている。外からもレモングラスとスパイスのいい香りが漂ってくる。彼はスマートに扉を開けてくれて、どうぞと先に通してくれた。カウンター席が五席ほど、テーブル席が四名がけが三組ある小さなお店だ。アジアンテイストの木目調の店内は実にシンプルであるが窓際やテーブルに飾られている小さな小物達が鮮やかであるから寂しくはない。

 メニュー表を渡され、じぃと見るとメニューにはランチはガパオライスや、カオマンガイ、タイカレーなんかもある。

「俺はここのタイカレーが好きでたまに来るんです。顔は覚えられてませんよ」

 うちほど通い詰めていないらしい。

「今日もそれにするんですか?」
「他も食べたいと思ってるんですけど、誘惑に勝てなくて。結局どこのお店に行ってもメニューは基本変えたくないんですよ」
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