Drive Someone Nuts
「そうなんですか?私てっきり…」

 彼は何故か少し困った顔で「あそこは特別で」と言う。

 水を持ってきた店員にタイカレーを二つ頼んで、店員が厨房に入っていくのを見届けてから高瀬は彼に今日聞きたかったことを尋ねた。彼は涼やかな表情で水を飲んでいる。

「ぶっちゃけ範囲内だったんですか?」

 私のこと。

 ごふ、と吹いた。少し耳が赤い。
 直球で尋ねたのが悪かったらしい。

「……えらくストレートですね」
「アプリで出会い、ってなんか見合いみたいなものだと思っていて。遠まわしに探るのも違うなって。最初は知り合いということで気まずかったですけど、もう開き直って岡田さんと今日は楽しみたいなって思ったんですよ」

 見合い程堅苦しくないけれど、気が合えば付き合いたい。本来ならお互いの心を知るまで時間もかかるし駆け引きもあったりするけれど、アプリに至っては目的が同じはずだ。逆に言えば目的が違えば縁も切れる。今回は顔見知りではあったけれど、切ろうと思えば今日なんてなかったと言える日にもなったはずなのにデートを続けることにしたのだ。もう開き直って色々聞きたいもんである。
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