残念姫、王子に溺愛される
夕食後片付けて、ソファに座っている歩稀の隣に座った恋羽。

すると歩稀が、恋羽を愛で始めた。
包み込むように抱き締めて、口や頬にキスを落としたり、頬を擦り寄せたり……

恋羽は、その愛撫を「フフ…」と嬉しそうに浸る。

「あ、そうだ!
今度、緋月くんとマリホさんと四人でお食事行かない?
緋月くんとマリホさんに、誘われたの!」

「え?」
(緋月…)

最近“緋月”の名前を聞くだけで、嫉妬心が顔を出す。

「歩稀さん?」

「ん?あ…うん、そうだね」

「じゃあ…連絡しなきゃ!」
そう言って恋羽がスマホを取り、操作し始める。

【緋月くん、お疲れ様!
お食事の件だけど、いつがいい?】

歩稀はそんな恋羽を後ろから抱き締めた。
「んん…歩稀さん?」

「ん?」

「あ、あの…くすぐったい…
ちょっとだけ、離れて?」

「やだ」

「やだって…」

「恋羽、いい匂いする…!
好き…//////」

「……/////」

するとそこに、緋月から返信が来る。

【連絡ありがとう!
歩稀に合わせるよ】

それを後ろから見ていた歩稀。
「面倒だし、緋月に電話して?」
と言った。

歩稀に「スピーカーでかけて」と言われ、恋羽が電話をかける。

『恋羽、お疲れ様!』

「……っ…」
歩稀は、この第一声の緋月の声にかなり驚愕していた。

あまりにも、優しくて甘い声だったから。

恋羽には、こんな甘い声で話しかけるのか………?

この声に“抑えきれない愛情”のようなものを感じる。

「緋月くん、お疲れ様!
歩稀さんが、面倒だから電話しよって」

『そっか!
いつがいいかな?』

「今週末は?」

できる限り“俺の恋羽と”話をさせたくない。

そんな思いで、恋羽の後ろからスマホに向かって声をかけた。

『え?歩稀?』

「うん」

『どうして、歩稀が出るの?』

「当たり前だろ?
“一緒に住んでるんだから”
“フィアンセ”だしね!」

『…………
今週末か。
うん、いいよ。
じゃあ…○○にしようか?
恋羽、そこのビーフシチュー好きでしょ?』
少し間があって、気を取り直したように緋月が言う。

「あ…でも、歩稀さんやマリホさんが良い所で…」

「『恋羽が良い所でいいんだよ!』」

綺麗に、歩稀と緋月の声がハモった。

「……フフ…フフフ!ハモった!(笑)」

「『あ…』」

恋羽はしばらく、クスクス笑っていた。



< 32 / 48 >

この作品をシェア

pagetop