残念姫、王子に溺愛される
個室に誘導され、席に座った。
コース料理が順に運ばれてくる。

そんな中マリホが、有名なお菓子の紙袋と封筒を渡してきた。

「歩稀、恋羽ちゃん。
結婚祝いのお返しと、結婚式の招待状よ!」

「わぁ〜、ありがとう!」
「ありがと」

「これ…もしかして!」

「緋月に聞いたの。
恋羽ちゃん、マドレーヌが好きだって!
ここの、とっても美味しいのよ?
歩稀と食べて?」

「ありがとうございます!
結婚式も、喜んで参加しますね!」

「えぇ!」

「歩稀さん、一緒に食べようね!」

「うん!」

「結婚式も、楽しみだね!」

「そうだね! 」

微笑み合っていると、マリホが「仲良いわね!」と笑った。

「………」
対する緋月は、嫉妬心に包まれていた。


そして………
ビーフシチューとサラダが運ばれてきた。

「………」
(わ…このブロッコリー大きい…)

恋羽は、ブロッコリーが苦手だ。
すると………

「恋羽、入れな?」
緋月が、自身のサラダボールを差し出してきた。

“ブロッコリーを食べてあげるから”という意味だ。

「あ…うん…」
恋羽がブロッコリーをスプーンですくう。

緋月のサラダボールに入れようとすると、恋羽のスプーンを持った手を握り、歩稀がそのまま口にブロッコリーを入れた。

「え?」

「ん!旨っ!
ブロッコリー、美味しいよ?」

「歩稀さ…//////」

「緋月、恋羽のことは“俺がするから”」

歩稀の鋭い視線に、緋月はグッと口をつぐんだ。

そして気を取り直し「あ、そう言えば!ポーチは?出来たの?友達に贈るって言ってたやつ」と微笑み問いかけた。

「え?あ、うん!
気に入ってもらえたよ!」

「良かったね!
恋羽はほんと、裁縫が得意だし売り物みたいに上手だもんね!
―――――僕も“名刺入れ、大切にしてるよ!”」

意味深に言った、緋月。
歩稀がそれに食いつかないわけがなかった。

「それ、何?」

「え?えーと……
緋月くんが就職した時に、就職祝いに贈ったの!」

「手作り?」

「うん」

「へぇー、そうなんだ…」

「う、うん」

「俺にもなんか作ってよ!
恋羽の手作り、欲しいな!」

「え?あ…うん!
じゃあ…考えておくね!」

恋羽が微笑むと、歩稀も嬉しそうに笑い、恋羽の頭をポンポンと撫でた。

「………」
その光景を、意味深に見つめるマリホ。

そして、歩稀と緋月に不穏な空気が流れていた。


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