残念姫、王子に溺愛される
「え……」
急に触れられ、びっくりしたように身体を引く恋羽。

「どうして、泣くの?」

恋羽は、泣いていた。
そしてタツシが目元を親指で拭う。

「え?」

「言葉と行動が噛み合ってないよ?」

「自分でもよくわかりません…」

「君って、ほんと綺麗だね!」

「そ、そんなことないです…」

「エリって、美人だけど…
…………外見だけだよ?」

「え?」

「ある意味、歩稀とお似合いなくらい心が汚い女」

「汚い…?」

「うん。
俺、エリに騙されて金取られたことあるんだ!
他にもそんな奴多くてさ!
だからね。
こんな女に嫉妬する方が、バカらしいよ?
お姫様が穢れる(笑)」

頭を撫でてくるタツシに、微笑み返した。

そして真田から連絡があり、デパート前で待つ恋羽。
タツシも見送るために、恋羽と一緒に真田が来るのを待つ。
「………シバノさん」

「ん?」

「ありがとうございました」

「え?」

「慰めてくれて、ありがとうございました!」

「……//////」
丁寧に頭を下げる恋羽に、タツシは照れたように顔を赤くして頰を掻く。

微笑み見上げる恋羽の周りが、輝いて見えた。

デパートの周りには、桜の木が多く並んでいる。
その花びらがふわふわと舞って、更に恋羽を美しく引き立てている。

すると、タツシの頭に桜の花びらがくっついた。

それを見つけた恋羽が、フフッ…!と笑いだした。

「え?な、何?」

「桜の花びらが…(笑)」
クスクス笑いながら恋羽は「ちょっと失礼します」と言って、タツシの頭上の花びらを取った。

「ほら!」
恋羽の手の平に花びらを乗せ見せた。

「あ…(笑)」
タツシも笑って、その花びらをつまんだ。

「フフ…!
歩稀さんや緋月くんにもよくくっつくんですよ?
フフ…フフフ…!
花びらがくっつくなんて、なんだか素敵ですね!」

クスクス笑う恋羽。
タツシはそんな恋羽に見惚れていた。
「……//////」

すると、車がゆっくり近づいてきた。
真田が運転席から出てきて、丁寧に頭を下げた。

「恋羽様、大変遅くなり申し訳ありません。
…………あ、タツシさん。こんにちは」

「あぁ」

「でも、なぜあなたが?」

「あ、たまたまデパートでお会いして。
お話相手になってくれたんです」

恋羽の説明に「そうなんですね!」と微笑んだ。
そして後部座席のドアを開け、恋羽に乗るように促す。

恋羽が、タツシに頭を下げ乗り込む。

「恋羽様、閉めますね!」
恋羽に微笑みドアを閉めて、タツシにも軽く頭を下げ運転席に乗り込んだ。


< 39 / 48 >

この作品をシェア

pagetop