残念姫、王子に溺愛される
「でも僕には、はっきり君のことが見える」

「え?」 

「あの日から、ずっと君のこと考えてたよ?
君のカゲが薄いなんてあり得ない。
なんなら、僕の目には君が輝いて見える」

「そ、そんな…//////からかわないでください…
聖王様もご存知ですよね?
私が何て陰で呼ばれてるか」

「“残念なお姫様”?」

「はい」

「ほんっと、失礼なこと言うよね…
この前も、もっと怒ってよかったんだよ?
ぶつかってきたのはあの従業員で、しかも君は怪我まで負わされた。
その事にも気付かず、オロオロしてその後のフォローも出来ない。
本当なら、あの場でクビだよ?」

「でも、失敗は誰にでもあることですし…」

「そうだね。
ちなみに、聞いてもいいかな?」

「はい」

「あの後、その従業員は何かしらちゃんと謝罪してきた?」

「いえ…」

「…………
確かに、失敗は誰にでもある。
でも、大事なのは“その後”」

「え?」

「失敗をした“後”が大事だよ?
僕は許せないな、そんな人間」

「聖王様…」

「まぁ、君が“もういい”ってゆうなら、何もしないけど。
“もし君が僕の恋人だったら”
タダでは済ませない」

恋羽を見据え、鋭い視線と声色で言い放つ歩稀。
恋羽は、そんな歩稀を恐ろしいと思いながらも見惚れていた。


「―――――でもどうして君は、あの日パーティーにいたの?
姫乃原の令嬢はまだ、大学生だよね?」

「あ、はい。父と緋月くんの代わりに…
二人はあの日、お仕事で行けなくて…
だから、私が代わりに出席したんです」

「あ、そうだったね!
確か、幼なじみだっけ?
それとも、恋人同士かな?」

「いえ!ただの幼なじみです!
聖王様は、緋月くんとは中高、大学でも同期なんですよね?」

「うん、そうだよ!
結構、仲良くしてた!
大学の途中から僕が会社で働き始めたから、あんまり会わなくなったけど!
…………幼なじみか……
でも幼なじみでも、恋愛関係になることあるよ?」

「そうですね。
でも、緋月くんは私のことを女として見てないので」

「そうなんだ。
じゃあ…今、君はフリー?」

「え?あ、はい」

「じゃあ……
遠慮なく口説いていいよね?」

「………」

「………」
歩稀が微笑んでいる。

「…………え……?
……………え!!?」


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